このようにアメリカの同盟国である日本を重視することによって、米中とのバランスを取ろうとする国も少なくない。トランプ関税に端を発した習近平氏の対米戦略は、登山で言えば、まだ5合目あたりと考えていい。
中国が台湾に仕掛ける
新たな「グレーゾーン戦術」
「今回の中ロ会談は、自分の代で台湾統一を成功させたい習近平氏にはプラスになったでしょうね。いきなりミサイルを撃つような可能性は低く、台湾を内側から崩す、資源を断つ、アメリカ軍を台湾の周辺海域に入れないといった手法で台湾攻略は進むと思いますね」
とは、在ワシントン保守系シンクタンクの研究員の言葉である。同じような指摘をするのが、台湾とは約110キロしか離れていない沖縄県与那国町の町議、嵩西茂則氏だ。
「ミサイルを撃ち込んだり揚陸艦で上陸したりするという武力行使ではなく、サイバー攻撃で台湾を混乱させたうえで、台湾の周辺海域を囲んで、原油や液化天然ガスが搬入されないようにするのではないでしょうか。そうすれば台湾はアメリカ軍が駆けつける前に干上がってしまいますし、私たちが住んでいる与那国島にも甚大な影響が出るでしょうね」
実際、2024年5月、アメリカンエンタープライズ研究所と戦争研究所が公表した「How China Can Take Taiwan Without a War?」(中国は戦争しないで台湾を獲れるのか)といったリポートでも、軍事衝突までは至らない、いわゆる「グレーゾーン戦術」の可能性が明示されている。
ひと口に「グレーゾーン戦術」と言っても、貿易戦、金融戦、メディア戦、ハッカー戦、それに資源戦など多岐にわたるが、これまで演習を繰り返してきたような、台湾海域を完全に封鎖し、エネルギーの輸入やアメリカ軍の支援を断つ兵糧攻めも、「戦わずして勝つ」という中国が好む孫子の兵法に沿う戦術である。