台湾を圧倒的な軍事力で威嚇し、ひざまずかせようとしている国が、今や世界の秩序のためにアメリカと戦う「自由貿易の旗手」気取りだ。もっと言えば、「世界の新盟主は中国」と言わんばかりである。

嫌われ者同士の中ロ首脳が
結んだ軍事同盟

 その中国は、習近平総書記(国家主席)が4月14日からベトナム、マレーシア、カンボジアを歴訪したのに続き、5月7日には、ロシアの「第2次世界大戦・対ドイツ戦争記念日」に合わせてモスクワ入りした。

 そして、さまざまなメディアで報道されているとおり、8日にはプーチン大統領と首脳会談、9日には軍事パレードをプーチン氏の隣で観覧する蜜月ぶりを見せた。

 ただ、これを単なる「蜜月アピール」ととらえてはいけない。東南アジア3カ国歴訪もそうだが、習近平氏が外国を訪問する際は、相応の計算が必ずある。

 習近平氏とプーチン氏は過去に40回以上、会談しているが、今回の首脳会談後に発表された共同声明2つを見ると、その狙いがよくわかる。

 1つは日本に対し「歴史問題で言動を慎み、軍国主義と決別せよ」というもの。そしてもう1つは、「中ロ両国は軍事技術協力を強める」「台湾は中国の領土の一部であることをロシアも確認する」という内容である。

 この2つの共同声明は、端的に言えば、アメリカおよびアメリカに追随する日本を抑え込むための軍事同盟宣言である。その狙いを要約しておく。

(1)歴史を裏付けとすることで、中国が目論む台湾統一、ロシアによる北方領土占拠とウクライナ侵攻の正当性を相互に認める。
(2)日本の防衛費増加をけん制し、中国が台湾や尖閣諸島(沖縄県石垣市)の統一に動いた場合、手を出すことは許さないとの強い意思を明確にする。
(3)アメリカ軍を想定し、中ロで軍事技術開発、合同軍事演習、定期的な海空の合同パトロールを強化していくと宣言する。

 振り返れば、中ロ両国は1996年に「戦略的協力パートナーシップ」を締結して以降、共同声明の声明のタイトルに「全面的」というワードを付けるようになった。そして、習近平氏が総書記に就任して以降は「新時代」という言葉まで付記されるようになった。