筆者は、習近平氏の共産党総書記として4期目がかかる2027年、そして中国人民解放軍創設100年という節目でもある2027年に向け、上記のような危険度は年々高まると見ている。
習近平が目論む
パンダでの日本懐柔
こうした中、日本は、トランプ氏と習近平氏双方との交渉に必死だ。石破首相は、トランプ政権との関税交渉と並行して、訪中した公明党の斉藤鉄夫代表に習近平氏宛ての親書を託すなど、バランス外交に腐心している。
そんな日本に揺さぶりをかける材料となっているのがパンダだ。和歌山県白浜町の「アドベンチャーワールド」で飼育されているジャイアントパンダ4頭は6月末に、また、東京・上野動物園にいる2頭も来年2月までには中国に返還され、日本は「パンダがいない国」になる。
そのため、4月29日、北京を訪問した自民党の森山裕幹事長は、中国共産党序列3位の趙楽際氏に、「新たにパンダを貸与してほしい」と頭を下げたほどだ。
中国が貸与期間の延長なく返還に傾いたのは、「パンダ外交」の効果を理解してのことだ。事実、4月29日、定例会見に臨んだ中国外交部の郭嘉昆報道官は、「パンダに関連する協力をめぐって、両国は頻繁な意思疎通を保っている」と述べている。
その裏には、「アメリカばかり気にしていないで、もっと中国と向き合ったらどうだ」という思いが込められている気がしてならない。当然ながら、台湾に与するような姿勢を見せれば、「未来永劫(えいごう)、パンダの貸与などない」というのが本音だろう。
国際社会は今、銃火器での戦争や関税による貿易戦争で、愛子さまが願う「世界平和」とはほど遠い状況にある。
国内を見れば、石破政権は、消費税減税も選択的夫婦別姓も何一つ前に進められないでいる状態だが、幸いなことに石破首相の得意分野は安全保障だ。
「来る参議院選挙で大敗し退陣」といった憂き目に遭う前に、その実力を平和の構築に発揮してもらいたいものである。
(政治・教育ジャーナリスト/びわこ成蹊スポーツ大学教授 清水克彦)