ファーウェイがエヌビディアに追い付いた?

 これまで、半導体や製造装置などハードウェアの製造技術では、中国企業の実力は十分ではないと見られていた。しかし、ファーウェイを筆頭に、中国企業は着実に先端分野の製造技術を習得し、米国を追い抜こうとしていると考えられる。こうした状況に、エヌビディアのフアンCEOが焦燥感や危機感を覚えるのは当然だ。

 ここ半年ほどのファーウェイに関する報道やシンクタンクの調査結果を見ると、中国の半導体産業は急速にAIチップの製造技術を実装しているようだ。米国が対中規制や制裁措置を強化すればするほど、中国勢はありとあらゆる手法でAI関連の製造技術を伸ばそうと心血を注いでいる。

 その象徴が、先述したファーウェイのAIチップAscendシリーズだ。ファーウェイは24年末ごろに、「Ascend910C」のサンプルを中国のAI関連企業に提供したとされる。910Cは、エヌビディアのH100の60%~70%の演算能力を実現したと、台湾のトレンドフォースが分析している。そして、5月から供給が始まったもようだ。

 それとほぼ並行して、ファーウェイがAscend910Dのサンプル供給を開始したと報道されている。910DはエヌビディアのH100と同等、あるいはそれ以上の演算能力を持つとみられる。今年中に、次世代のAscend 920の量産計画もあるという。

 ファーウェイは、傘下の半導体設計企業や中国最大手のファウンドリーである中芯国際集成電路製造(SMIC)と協力し、先端AIチップの製造能力を引き上げている。政府の産業補助金支給を支えに、SMICは回路線幅6ナノメートルレベルの製造ラインも確立したと報じられている。SMICの製造能力は7ナノレベルとみられていたが、微細化の点でもTSMCとの実力の差は縮小していることになる。

 中国政府は、半導体の製造・検査装置の国産化にも積極的に取り組んでいる。21年設立の新興企業・深セン市新凱来技術では、わが国やオランダが得意としてきたASMLの露光装置、シリコンウエハーの表面加工を行う装置を開発し、ファーウェイやSMICに納入しているとみられる。