AIモデル開発で米国を猛追する中国

 現時点では、米国はAI分野で世界トップの地位を維持しているとみられる。スタンフォード大学の「人間を中心としたAI研究所」(HAI)の報告書を見てみよう。

 2024年、米国では民間によるAI関連投資額が1091億ドル(1ドル=144円で約15.7兆円)に達した。中国の93億ドル(同1.3兆円)の12倍だ。同研究所が「注目に値する」と認定したAIモデルの発表数では、米国が40、中国は15、欧州は3。米国は投資額、モデル開発で世界トップだった。

 新しい推論モデル開発を支える要素の一つが、GPU最大手のエヌビディアである。同社は「H100」「H200」そして「ブラックウェル」と、AIチップの演算処理能力を高めてきた。AI開発のソフトウエアも提供している。それらを活用することで、米オープンAIやマイクロソフト、グーグルらのモデル開発が加速したのだ。

 しかしその後、ソフトウエア分野での米国の優位性が変化している。HAIによると、24年1月時点で米国のAIモデルの推論能力は中国モデルを9.26%上回った。それが今年2月時点で差は1.70%に縮小したという。

 4月末、中国シャオミは新しい推論モデルである「MiMo」を発表。推論能力は米オープンAIの「o1-mini」やアリババグループの「通義千問」を上回るという。なお、4月下旬には、アリババの通義千問の最新バージョンも発表されており、中国AI業界の開発競争の激しさが見て取れる。

 社会と経済へのAI普及・実用化の基準で評価すると、中国は米国を上回っているとの見方もある。HAIによると、中国ではAIを搭載した産業用ロボットの導入が加速度的に増えているそうだ。

 しかも、最新のAIモデルの多くを開発しているのは、中国で教育を受けた人材とみられている。スタンフォード大学フーバー研究所の調査報告書によると、中国AI企業ディープシークの研究者201人のうち111人は、教育を中国国内だけで受けてきた人材だったという。