苦境や困難に直面したとき、すぐに悩んでしまう「不幸体質」の人がいる一方で、「絶対に悩まない人」もいます。そんな「悩まない人」になるための考え方を教えてくれるのが、書籍『不自由から学べること ―思いどおりにいかない人生がスッとラクになる33の考え方』です。12歳からの6年間を「修道院」で過ごした著者が、あらゆることが禁止された暮らしで身につけた「しんどい現実に悩まなくなる33の考え方」を紹介しています。
この記事では、本書の著者である川原マリアさんと、もともと親交があり、『感性のある人が習慣にしていること』などの著書を持つアーティストのSHOWKOさんに「不自由の楽しみ方」をテーマにお話しいただいた内容を紹介します(ダイヤモンド社書籍編集局)。

働きながらの子育てで「つぶれる人」と「両立できる人」、シンプルすぎるたった1つの違いとは?Photo: Adobe Stock

「子育てという不自由さ」と、どう向き合うか

川原マリア(以下、川原) SHOWKOさんは子育てをしながら執筆やブランド運営など、さまざまな活動をされていますよね。私も最近子どもが生まれ、仕事と育児の両立の難しさを実感しているところです。これまで、どのように向き合ってこられたのでしょうか?

SHOWKO たしかに子育ては大変で、「今までの自分」では対応しきれない場面の連続ですが、その都度、心と体のキャパシティが少しずつ広がってきたように感じています。日々の中で、自分自身が育っていくような感覚でしょうか。

働きながらの子育てで「つぶれる人」と「両立できる人」、シンプルすぎるたった1つの違いとは?『感性のある人が習慣にしていること』SHOWKO(著)、272ページ、クロスメディア・パブリッシング

川原 本当に、毎日、強制的にレベルアップさせられているような感覚ですよね。「休むことも大切」とは思いつつも、子どものことを思えば、そう簡単に立ち止まるわけにもいかなくて…。

SHOWKO とてもよくわかります。

 私も10年前、初めての出産した頃は、今振り返ればずいぶん無理をしていました。子どもが生まれても、「産前と同じ生活をしてやる」と意気込み、不自由さと真正面からぶつかり合っていたように思います。

 でももっと、日々変わっていく子どもの表情やしぐさに素直に目を向けて楽しめばよかったなと、今では感じています。

「困る」から、人との繋がりができる

川原 私も、なるべく仕事のペースを落とさないようにと頑張っていた時期がありました。でも、SHOWKOさんや友人たちの言葉に背中を押されて、少し肩の力を抜けるようになってきました。何より、周囲の人に助けを求めることの大切さを学びました。

SHOWKO それは本当に大切な視点だと思います。

 北欧では、社会保障制度が整っている一方で、「困ったときに他者を頼る文化」が希薄になる傾向があると聞いたことがあります。困っているからこそ、人とのつながりが生まれる。その意味では、頼らざるを得ない不自由な状況が、むしろ人間関係を深めてくれるのかもしれません。

 物質的にはある程度満たされている今の日本では、「助け」を求めづらくなっている側面もあると思います。けれど時代が変わっても、育児の大変さそのものは変わりません。だからこそ、ひとりで抱え込んでしまうのではなく、他人を頼ることも大事だなと思います。

川原 私自身、「これは自分ひとりでは無理だ」と思えるようになってから、ずいぶん気が楽になりました。

 自分の弱さを認めて、それをオープンにして、周囲に助けを求める。すると世界が広がる感覚がありました。子育てに悩んだことで、他者を頼ることの大切さに気づけたんです。まさに、不自由から学んだことです。

「子育て」が、人生で大切なことを教えてくれた

川原 私は子育てにおいて「できるだけ機嫌よく過ごす」ことを意識しているのですが、SHOWKOさんは何か大事にしていることはありますか?

SHOWKO 「自分で選んだ」という経験を、できるだけ多く与えてあげることでしょうか。

「それが良いなら、そうしてみようか」と、子どもの選択を尊重するようにしています。子どもが自分の感覚や直感で選んだことが、本人にとっての幸福につながっている。その手応えが持てたときが、親という役割の一区切りなのかなと感じています。

川原 子どもとはいえ、自分とは異なる他人。すべてをコントロールしようとしても、思い通りにはいきませんよね。

SHOWKO そうなんです。そこで「相手の選択を尊重する」という意識があれば、子どもの意見や主張を楽しんだり肯定してあげたりする余裕が持てます。

 これは子どもが相手のときにかぎらず、あらゆる人間関係において大切な視点ですよね。その気づきを、私は子育てという「不自由さ」から学んだように思います。

(本稿は、書籍『不自由から学べること』著者による対談記事です。書籍では「不自由な現実に悩まないための考え方」を多数紹介しています)

SHOWKO(ショウコ)
陶芸家。アーティスト
京都にて330年の歴史のある茶道具の窯元「真葛焼」に生まれ、茶道をはじめとした日本文化が日常にある家庭で育つ。2002年より佐賀県武雄の草場一寿氏の元で修行の後、2005年に京都に戻り、自身の工房をスタート。何度も塗り、焼き重ねることによって立体感と透明度の増す独自の技法で陶板画制作をはじめる。2009年にブランド「SIONE(シオネ)」を立ち上げ、全国で多数の企画展を開催し、2011年より海外で展開。ミラノサローネに出展後、ヨーロッパでの展示会を多数開催。その後、アジア各国にて展覧会、茶会を開催し、アートワークや器を通して日本文化を伝える。2016年には銀閣寺近くの旅館をリノベーションし、工房兼ショップをスタート。その後、2019年、京都に新しくできたアートホテルの2部屋を制作するなど、本格的にアートワークの制作に力を入れる。2025年、工藝の精神性にねざした宿「うたひ」を開業し、工藝家の新しい役割を提案している。