結局、バブル景気とは何だったのか?当時「バブルを潰せ、退治せよ」の声が上がっていた意外な理由写真はイメージです Photo:PIXTA

地価や株価が上昇し、好景気が続くと思いこんでの投機が進んだことで実体経済からかけ離れた膨張を示した「バブル景気」。その後のバブル崩壊で日本の経済成長は鈍化していくが、今でも「あの頃はよかった」と懐かしむ人は少なくない。一方で、国民全体がバブルを謳歌していたかというとそんなこともないようだ。※本稿は、前田裕之『景気はなぜ実感しにくいのか』(ちくま新書)の一部を抜粋・編集したものです。

マンション建設が急増
高級品も売れた「バブル景気」

 1986年12月から91年2月までの景気拡張期が「バブル景気」である。1987〜90年度の平均成長率は5.8%に達した。この頃、国民は好況を実感していたのだろうか。

 87年には超低金利の恩恵を受けて住宅投資が急増した。政府の「緊急経済対策」により公共投資も増加した。地価上昇で担保価値が高まり、土地の所有者は資金調達が容易になる。1980年代後半には東京を中心にマンション建設が活発になった。

 88年には企業の設備投資が増勢に転じた。金融機関からの借り入れ、社債発行などで資金を調達するのは容易だった。高度成長期の再来を思わせる設備投資ブームが起きたのである。

 賃金が上昇し、個人消費も伸びる。乗用車、カラーテレビ、VTRなどの耐久消費財の高性能、高品質化が進み、高級品を求める傾向が強まった。ゴルフ会員権の人気が高まり、レジャー、外食などのサービス関連の支出が増えた。

 株価や地価の上昇で資産価値が高まり、消費にもプラスの影響を与えたのである。