トランプ米大統領の一挙手一投足に一喜一憂し過ぎている、これが「情報洪水」の罠【池上彰・増田ユリヤ】トランプ米大統領のファミリー企業は、次期大統領選挙が行われる2028年の数字がロゴに入った帽子などの販売を始めた AFP=JIJI

トランプ大統領が狙う
任期延長のウルトラC

池上 ウクライナ戦争の和平交渉や関税戦争で世界を揺るがせているトランプ米大統領。今度はオンラインサイトで「TRUMP 2028」というロゴの入ったTシャツや帽子などのグッズを売り出したと報じられました。

 ロゴに入った「2028」は、次期米大統領選挙が行われる年を意味し、改めて出馬する意欲を示したのではないかと騒がれているんです。

 実際、3月30日にはインタビューで「任期を延ばす方法はある。冗談で言っているのではない」と発言していました。

 これを受けて「合衆国憲法を修正し、大統領任期を3回までに延ばすのではないか」と警戒する声が上がっています。

増田 現時点では、大統領任期は4年の任期を2回までと決まっているんですよね。

池上 はい。合衆国憲法修正第22条は、「いかなる者も2回を超えて大統領に選出されることはない」と定めています。

 もしトランプ氏が任期を延長するつもりでいるならば、憲法改正が必要です。連邦議会の上下両院で3分の2以上の賛成を得た上で、全米50州のうち38州の議会での承認を得なければなりません。

 ただし、ウルトラCがあるんです。2028年の大統領選でバンス米副大統領を大統領候補にし、自分が副大統領候補になるのです。そしてバンス氏が大統領に選出されたらすぐに辞任して、副大統領のトランプ氏が大統領に繰り上がるのです。もちろん、法的に認められるか否かの議論はありますが。

増田 そんなロシアみたいなことが可能なのでしょうか。

 確かに、ロシアではプーチン大統領が4年の任期を2回務めて退任した後、メドベージェフ氏を大統領にして、自分は首相の座に就きました。その間に憲法改正を行って大統領任期を延長。1期6年とし、改憲前の任期についてはカウントしないこととした。24年3月の大統領選で圧勝したプーチン氏は、憲法改正により36年まで大統領の座に就き続けることができます。