
ネガティブ・サプライズとなった相互関税
「トリプル安」で「90日間発動停止」後の行方は?
トランプ政権が発動した「相互関税」のうち、約60カ国・地域を対象にした上乗せ関税分は発動まもなくの4月10日(日本時間、米国では9日昼)、一転して「90日間の停止」となった。
急展開の背景には、相互関税によるインフレ再燃や消費落ち込みなどが懸念され、米国経済の不透明感の強まりから株式やドル、米国債が「トリプル安」となる事態に、トランプ政権が対応を迫られたことがある。
政権発足以降、中国・カナダ・メキシコや、自動車などへの個別品目の関税引き上げを次々と発表し、世界を混乱させてきたトランプ関税だが、その影響は米国経済にも「ブーメラン」のように波及する。
単純計算でも、家計の負担増による個人消費減速、あるいは企業業績の悪化などで米国のGDPが2.1%程度下押しされる可能性がある。少数のテック企業と富裕層の投資による高株価が米国経済全体を支えてきた中で、株価下落が続けば、景気減速にさらに輪をかけることになる。
トランプ大統領は、日本を含めて約75カ国が、関税見直しで協議を求めているとして、上乗せ関税の発動停止期間中に、「取引(ディール)」に応じる意向を示している。4月16日午後(日本時間17日朝)には、その第一弾として、日本の赤沢経済再生相とトランプ大統領らとの会談が行われた。トランプ政権は、コメなど農産物への高関税のほか、輸入車などへの規制や補助金なども非関税障壁として批判し、16日の会談では、在日米軍に関する費用など、日本の安全保障負担の低さにも言及したといされている。
しかし90日という限られた時間に、米国が主張するこうした問題で合意に至るのは容易ではないだろう。
関税政策の行方を決める要因としては、支持者や議会など米国の国内世論が今後、どう変わっていくかが最も重要になりそうだ。