一方のトヨタによる苅田町のEV電池工場の建設計画延期のニュースは少し、日産とは事情が異なります。

 トヨタが建設しようとしているのは次世代の主流と目される全固体電池の工場です。この技術は業界の未来を変える技術であることには違いがないのですが、予測としては2030年代の主力技術であって、即戦力ではありません。

 トヨタは建設時期を遅らせると見られていますが、そこからすぐに考えられることは今期の経費の節約です。

 トランプ関税の利益への影響は▲21%程度と見積もる一方で、今期はあらゆるリスクを排除しようと、いわゆるトヨタ流の「乾いたぞうきんをさらに絞る」施策が行われるはずです。苅田町の話もその一環だと理解すれば、わかりやすいのではないでしょうか。

 ただ電池に関して言えば、もっとも重要なニュースがあります。トヨタが今期(2026年3月期)の新エネ車の世界販売計画を下方修正するというニュースです。前期(2025年3月期)におけるトヨタのEVとPHVの合計販売台数は約31万台でした。トヨタはそれを今期は約52万台に増やす販売見通しを発表しています。

 これとおなじペースで翌年も増やすという単純計算をすると2026年の新エネ車の世界販売台数は約90万台弱になるペースで、やはりこのままでは150万台の以前の計画は大幅に下方修正されそうです。これを佐藤社長は、「実需のペースが変われば基準も変えていくもの」と語っていますが、懸念は残ります。

 そもそも佐藤社長が就任時に150万台計画をぶち上げた際の一番の批判は、それだけの新エネ車を販売するだけの電池の調達計画が立たないだろうということでした。新エネ車の計画見直しには、確かにヨーロッパでの新エネ車需要のブレーキも関係しますが、タイやインドネシアでのEV需要の急増については電池供給に関して何らかの対処が必要です。

日産はトヨタ、両社に利する大胆提言!でも、
ホンダと統合破談してるようじゃ無理か…

 実はトヨタのグローバル戦略に関してはあまりメディアで強調されない懸念材料があります。日本市場での利益依存が大きすぎるのです。