直近の決算では営業利益のうち全体の3分の2にあたる約3兆1600億円を日本市場で稼いでいます。そしてアジア市場がそれに次ぐ全体の約2割の約8900億円の利益を稼いでいます。一方で北米市場の営業利益は約1000億円しか稼げていません。

 北米市場には別の問題があります。利益が少ないにもかかわらず、最終顧客に対する売上高では北米市場がトヨタ全体の4割を売り上げていて突出しているのです。そして日本市場は地域別の売り上げ規模で、全体の約16%と大きく地位を下げていて、全体の約17%を占めるアジアの売り上げに抜かれてしまっています。

 長期的に縮小が見込まれる日本市場で大半の利益を稼ぐ構造になっている。そこにトランプ関税による北米市場の赤字転落リスクと、アジア市場での中国メーカーの急躍進問題にトヨタは直面している。このグローバルな収益構造の不均衡こそ、メディア各社が報道していないトヨタの「本当の課題」です。

 さて、トランプ関税については今後の推移を見守るしかないとすれば、手を打てるのはアジア市場ということになります。下方修正するとはいえ、それでも新エネ車を年間90万台規模で販売するとすれば、その主力市場もアジアになるでしょう。この市場ではせっかくEVの新車を投入できているわけですから、その勢いをなんとか落とさずに頑張ってほしいものです。

 そこで注目すべきはやはり将来の電池の供給力ということではないかと私は見ています。

 この文脈でいうと、今、急速に重要度が上がっているのは北九州で宙に浮いた日産の投資計画ではないでしょうか。電池の供給能力に課題があるトヨタは日産からこのLFP電池の工場の用地と、建設計画書を購入してはどうでしょうか。そして資金と利益計画に課題がある日産は、トヨタに断念した計画を販売してはどうでしょう。

 少なくともふたつの課題のうちひとつは戦略で解決できる話だというのが私の見立てです。

 とはいえトヨタと日産の過去の戦いの日々を考えると、当事者同士では簡単には進まない話だとも思います。一方で日本の未来にとっては重要な話です。この話、経産省、福岡県、北九州市は少し真剣に働きかけを検討してみてはどうかと私は思います。いかがでしょうか。

【訂正】記事の初出時より以下の通り訂正しました。
1ページ目3段落目「全固体電池」→「次世代電池」
(2025年5月16日 10:00 ダイヤモンド・ライフ編集部)
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