日産とマツダが不確実性の高さから見通しの発表を見送った一方で、トヨタ、ホンダ、スズキ、マツダはいずれも大きな営業減益となる見通しを発表しました。注目されるのはその減益幅です。

 4社の中で営業利益の減益率が最も小さいのはトヨタ。営業利益3兆8000億円と前年比で▲20.8%の減益を予想。減益率が最も大きいのはホンダで▲58.8%の大幅減益予想を発表しています。

 実はこの発表をよく読むと、トヨタとホンダの減益率の違いはトランプリスクの織り込み方の違いであることが判明しています。

 具体的には他の自動車各社が為替レートを1ドル=145円と想定する一方で、ホンダはトランプリスクの要因でもある円高を織り込んで135円で設定しています。ホンダの場合、米ドルレートが1円動くと営業利益が100億円動きますから、この要因だけで他社よりも1000億円営業利益を固めに見積もっています。

 またホンダは年間の関税の影響額を6500億円と計算しています。一方でトヨタの予想では1800億円となっていて、これはすでに発動した関税による4月と5月分の影響額を計算したものだということです。

 実はアメリカのGMも関税による追加コストを6000億~7000億円程度と見込んでいます。アナリストの間ではホンダやGMに準じて計算すれば関税問題が解決しなかった場合のトヨタの年間影響額は12カ月分、つまり公表額の6倍でもおかしくないという話です。

 トヨタの関税影響額の想定を上記の前提で増やし、ホンダの為替影響額から営業利益を逆に1000億円増やして計算するとどうでしょう。トヨタの営業利益は前年比▲55%、ホンダは▲51%と見通しの数字はほぼ同じ水準になります。

 つまり、前提を揃えたら各社の影響は大差ないのです。トランプ関税が強行されれば▲50%台の減益、そこにトランプが望むような1ドル=135円クラスの円高ドル安が加われば▲60%前後の営業減益が生じてもおかしくない、というリスクを自動車各社は抱えているのです。