しかし最近は、ケトジェニックダイエットのような糖質制限ダイエットが、2型糖尿病の治療でも注目を集めています。糖尿病治療薬の必要性を減らしたり、さらには2型糖尿病を寛解させたりなど、脂質をカットするよりもっと効果的かもしれないと考えられているのです。

 一方、最近の研究では、高でんぷん質の植物性食品メインの食事が、2型糖尿病患者の体重減少と、コレステロールなどの代謝リスク要因の改善に、極めて効果的であるとわかりました。

 これはニュージーランドで行われたBROAD研究という実験で用いられた食事療法で、ケトジェニックダイエットの食事とは、主要栄養素のバランスが大きく異なります。

 2型糖尿病の治療に最適な唯一の食事療法を追い求めるよりも、効果的なアプローチは1つではなく、患者の好みや状況に合わせて調整できると考えたほうがいいでしょう。1人ひとりに合わせた医療を目指す動きは、あらゆる医療分野において見られる傾向ですが、食事療法においてはとくに重要な考え方です。

主要栄養素が偏ると
不安が悪化するリスクあり

 食事の主要栄養素バランスが、不安症を直接改善もしくは悪化させるケースも多々あります。脂質制限と糖質制限のどちらのほうがすぐれているかの論争は、食事と心の健康の関連性が十分に解明される前に起こりましたが、それから理解が進んだことで、特定の主要栄養素をほかの主要栄養素よりも優先するのは、不安を悪化させるリスクがあるとわかってきました。

 たとえば脂質を制限すると、不安症との闘いに非常に重要な、オメガ3脂肪酸が不足する可能性があります。一方で、糖質をカットしようと炭水化物をむやみに制限すると、腸内マイクロバイオームの制御に必要不可欠な食物繊維が十分にとれなくなるかもしれません。また、タンパク質を制限(もしくはタンパク質の種類を制限)すると、トリプトファンなどの必須アミノ酸が不足する可能性があります。