労働組合をめぐり、20年前にはなかった「無関心」と「無力感」が広がる。そう指摘した梅崎教授はこうも話した。
「20年前はすごい批判があった。怒りがあった。言ってみれば期待がある、ということだ。でも今は、その批判もなく、無関心になっている。でも、ここから始めないとだめだということだと思います。無関心をどう変えていくか、無力じゃないと伝えていくか、参加を促していくか」
実際、会うと労組の人たちの対面のコミュニケーション力が高いと指摘したうえで、コミュニティーデザインの観点から助言した。
「後から入りづらい、開放性がないコミュニティーをつくっているのではないか。以前、地域コミュニティーを作っている人から聞いて、参考になったのは、他人の能動性を促す、という視点だ。自分が能動的に物事を進めて、人を受動的にしてしまうのではなく、人を促すことが重要なのではないか」
労組の関心を高めるため
試行錯誤がつづく
報告書で浮かび上がった課題は、労働組合の現場でどう受け止められているのか。
24年11月中旬、東京都内の貸し会議室で、この報告書をめぐって、組合の執行部のメンバーが集まるワークショップが開かれた。
主催したのは「j.union」(本社・東京)。労働組合の役員だった西尾力氏が1989年に創業した会社で、労働組合支援に特化して、教育研修や調査、組合組織のコンサルティングなどを手掛けている。連合傘下ではない労組も含めて、4700以上の組合支援にたずさわってきた。
この日も参加したのは、独立系のファミリーマートユニオンや連合傘下の労組など12組合で、専従や非専従としてかかわる20~50代の21人が参加した。いくつかのグループにわかれて参加者が話し合う場面があった。
報告書の大きなテーマとなった「労働組合に対する『無関心』『わからなさ』どう克服すればいい?」をめぐって話し合うグループ。
「自分の行動が正しい、良いと思っている人ほど、相手にどう見せるかに気を回さない。労組役員も同様で、活動の当事者として労組の取り組みを語る際に、苦労や大変さをアピールしがち。でも、もっと楽しい話をした方がいい」
KDDI労組副中央執行委員長の浦早苗さん(46)はそう話した。
執行部の人となりに焦点をあてて発信することで、社内で関心が高まったケースも共有された。