カスハラどころか犯罪だろ!土下座、包丁、チェーンソー…悪質すぎる「お客さま」たちの暴走現場写真はイメージです Photo:PIXTA

2024年秋、東京都が全国で初めて「カスハラ」条例案を都議会に提出し、この問題が世間に広く認知される契機のひとつとなった。今では社会問題と認識されているカスハラ問題だが、そこに至るまでに様々な壁が存在したという――。※本稿は、藤崎麻里『なぜ今、労働組合なのか 働く場所を整えるために必要なこと』(朝日新聞出版、朝日新書)の一部を抜粋・編集したものです。

東京都が全国初の条例案
“カスハラ”にNOを突きつける

「暴力・暴言」「不当な要求」「無断撮影」「セクハラ行為」

 東京都内を走るタクシーの助手席の背に張られたシールには、運転手にとっての「カスハラ行為」の言葉が、それを表す絵とともに並ぶ。

 東京都も2024年秋、都議会に、全国で初めて「カスハラ」条例案を提出した。東京都内で、客からの迷惑行為を防ぐため、官民に対策を求める内容だ。罰則規定はないが、民間企業の客だけではなく、自治体の窓口や議員から自治体職員に対する行為も含んだ幅広い内容だ。

 ちょっと前まで聞かなかった「カスハラ」は、顧客が従業員に対しておこなうハラスメントを意味するカスタマーハラスメントの略称だ。「お客様は神様」という考え方が強かった日本で、働き手の権利や働く環境が守られるよう、客が悪質なクレームをつけることを問題化した。

 火付け役は労働組合。最も人数が多く、スーパーやドラッグストアといった流通業で働く人が多く入る産業別組合のUAゼンセンから始まった。

 2015年11月ごろ、東京千代田区にあるUAゼンセンの会議室で開かれた流通部門の社会政策委員会に、流通業に加盟する組合の委員長ら14、5人が集まっていた。