ただ当時とは時代が違う、という認識もあるという。たとえば中村主幹研究員は、当時の委員の1人が出版した本で労働組合について「労働貴族」として批判していたことをふまえ、「いまは労働組合が社会的におかれている状況も、担い手自身もかなり変化している」と指摘した。

 組合員への調査結果からも、日本でも共働き家庭が増える中で「男女ともに組合活動をおこなうための時間的な負担感は高くなっている」とみる。非正規で働く場合も、仕事以外に組合活動の時間を割いたり、組合費を払ったりするのが難しく、参加しづらい環境にある人もいるという。

 中村主幹研究員は会見で「課題が山積していても、労働組合の現場はリソースが不足して身動きが取れなくなっている。その状況を現実的に解決するには、組合活動の前提を見直す必要があった。それが労働組合法の見直しや組合役員のクオータ制導入という制度提案につながった」と説明した。

「変革したくても、過去からの積み重ねと、組合の先人(先輩)たちの思いや声の大きさから、今までのやり方を変えられないということがあるならば、それをどう乗り越えるかといった議論もあった」とも話した。

21.8%もの勤労者は自社の
労働組合の有無が「わからない」

 報告書で強調されたのは、調査で浮かび上がった組合の存在感の低下だ。法政大学の梅崎修教授(労働経済学・労使関係)は、連合総研の「勤労者の仕事と暮らしに関するアンケート(勤労者短観)」の2003年と、新たに2022年に問い直したものの比較分析を「批判されるより怖いこと――『勤労者短観調査』の20年の比較」としてまとめた。

 アンケートの回答者は組合員に限らない勤労者であるが、調査の手法は郵送からインターネットに変わった。

 目立つのが、労働組合について「わからない」とする回答の多さだ。「勤め先に労働組合がありますか」という質問に対して、「わからない」と答えた人は03年は9.7%だったが、22年には21.8%と倍増した。

 梅崎教授はこれについて「『わからない』の多さは、職場における労働組合の存在感のなさを意味しているのではないか」と指摘した。