省エネ性能が低い戸建は
時代遅れになる?

 買い手からするとたまったものではありませんし、そんな土地に家を建てて売るなよ、と住宅メーカーに文句のひとつも言いたくなるところですが、自治体と住宅メーカーはそもそも見ている方向が違います。

 後者は営利が目的であり、都市計画を第一に考えているわけではありません。貧乏くじを引かないようにするには、家を買う前に自分で自治体の都市計画について把握し、自衛するしかないのです。

 居住誘導区域の地価は、誘導区域外からの移住者によるニーズもあるため、維持もしくは上昇する可能性があります。その中で戸建を買おうというとき、メインの選択肢は中古住宅になる見通しです。

 この先人口が減り、大手住宅メーカーは海外シフトの方針を明確に表し、住宅建設に携わる技術者も減り、資材価格が高騰するなか、新築戸建の供給は減っていくと見られるからです。すでに、新築住宅の着工戸数は毎年ゆるやかに減少し始めています。

 マンションでは新築物件の販売価格が吊り上がり、富裕層でなければ手が出ない状況になりつつありますが、立地適正化計画が進んだ世の中では、新築の戸建もまた、資金力のある実需層のみが買えるものとなるかもしれません。

 政府が新築住宅の省エネ基準を強化していることも、新築戸建の供給ペースに歯止めをかけるでしょう。省エネに気を遣った家造りをしようとすると、どうしてもコストはかさむため、安い家をたくさん売りさばくようなやり方は不可能になります。

 日本は2050年までにCO2排出量を実質ゼロにすることを目指して、全方位的に省エネへの取り組みを進めています。その一環として、2025年4月からはすべての新築住宅に省エネ基準適合を義務化します。

 省エネ基準とは、「建築物が備えるべき省エネ性能の確保のために必要な建築物の構造及び設備に関する基準」のことで、断熱等性能等級(断熱等級)と一次エネルギー消費量等級で判断します。

 基準は2025年と2030年の2段階で最低ラインが引き上げられることになっており、2025年については「断熱等性能等級(断熱等級)が4以上」かつ「一次エネルギー消費量等級4以上」が最低ラインに。2030年からは「断熱等級が5以上」かつ「一次エネルギー消費量等級6以上」になります。