その点、断熱性能が高く、家の中に外気が侵入しにくい家であれば、室内の温度が安定するために夏は涼しく、冬は暖かい家になり、冷暖房の利用頻度や稼働時間を減らせます。断熱性能が低い家では、エアコンをつけている部屋以外冷え切っていることが多いですが、断熱性能が高ければ部屋ごとの温度差が生じにくくなるため、気温差が血圧に影響することで引き起こされるヒートショックも予防できます。

 ヒートショックまでいかなくても、室内の冷えは慢性的に血圧に悪影響を与え、さらにはコレステロール値を引き上げるなど、体にさまざまな不調を及ぼしやすいということが学術的に証明されています。そのため、断熱性能を高めること=健康寿命を延ばすことにつながるとも言われているのです。

 断熱性能を高めるには、施工段階で床、天井、壁に熱の逃げ道がないようにすき間なく断熱材を入れたり、機密性能の高い窓、あるいはドアを取り付けたりと、さまざまな方法が挙げられます。近年は技術が進歩し、夏も冬も内部は快適な温度を保つことができて、冷暖房費があまりかからない家造りが可能になりました。

光熱費が月3000円で済む
「ニセコ ボッカ」とは

 その好例が北海道ニセコ町の高性能住宅です。スキーリゾートであるニセコ町は、省エネと再エネを促進する実験的なSDGsモデル地区「ニセコミライ」を創設するなど、環境に配慮した都市計画に力を入れています。

 2024年12月には、このニセコミライの中に断熱等級7で省エネルギー性能等級6という条件をクリアした、高性能賃貸住宅「モクラスニセコA棟」が上棟しました。

 そのプロトタイプとして2023年に建てられたのが、木造の賃貸集合住宅「Niseko Bokka(ニセコ ボッカ)」です。このニセコ ボッカは、氷点下20度まで達することもあるという冷え込みの厳しいニセコの地に位置しながら、光熱費が月3000~5000円程度という破格の安さに抑えられています。

 ニセコ町の一般の住宅では、エアコンだけでは事足りず、灯油のファンヒーターなども併用することで寒さをしのぎます。そのため、暖房代だけで月3万~5万円以上かかることもザラ。しかし、ニセコ ボッカは家庭用のエアコンだけで快適に生活できて、寒さに悩まされることはありません。