木造であろうと、適切なメンテナンスを施し続けることで寿命を延ばし、100年でも住み続けることはできます。しかし、屋根の点検・葺き替えや外壁塗装などを定期的に行い、建物の状態維持に気を配っている人は、そう多くありません。
そうしたこともあって、中古の戸建の販売価格が新築分譲時を上回ることはほぼありません。「新築の戸建は、人が住んだ瞬間から資産価値が3割下がる」と揶揄(やゆ)されるとおりで、マンションと比較するとコスパは悪いと言えます。
郊外では戸建が人気だが
立地の見極めが重要
マイカー保有率が低く、駅に近いマンションに住みたいというのはあくまで都心部のニーズであり、車が必須の郊外エリアでは、今でも戸建志向が強くなっています。地方都市にもタワマンが増えつつあるため、この価値観は徐々に塗り替えられていくかもしれませんが、当面はまだ戸建への引き合いも強いでしょう。
住宅メーカーも、郊外では新築の建売をローコストで建て、比較的手頃と言える価格で売るというおなじみの戦略を今も展開しています。
手頃な価格に設定すれば、月々の住宅ローン返済額が近隣の賃貸マンションの家賃とそれほど変わらない、もしくはそれより安い金額に収まり、「それなら戸建を買ったほうがトク」という結論に落ち着きやすいからです。ただ、それでも売れ行きが絶好調というわけではなく、大幅に値引きしてやっと売り切っているパターンもよく見られます。
車で移動するのが前提とすると、予算に合わせて気に入った家を買えば、立地はそこまで重視しなくていいと思われるかもしれません。しかし、郊外であっても立地は非常に重要です。今後、郊外エリアでは立地適正化計画にのっとって、街のコンパクト化が進められていきます。駅やショッピングモールなどが集まる中心エリアから離れすぎると、居住誘導区域から外れる恐れがあります。
もし、買った土地が居住誘導区域外になってしまった場合、すぐさま何かが変わることはないとしても、徐々に行政サービスの提供が減り、最終的にゼロになります。ゆくゆくは行き交う人がいなくなり、治安が悪化するリスクも高いでしょう。
そんなところに住み続けるわけにもいかず、家を売りたいと考えたとしても、居住誘導区域外の地価はほとんどゼロになるため、売るに売れません。