ほとんどの路線が
赤字のJR四国

 では、不採算の鉄道事業を整理、縮小することで持続可能な範囲に留めればよいかというと、問題はそう簡単ではない。2023年度の線区別収支を見ると、本四備讃線児島~宇多津間18.1キロを除く835.6キロは全て赤字だが、その多くは一般的にイメージされる「赤字ローカル線」とは異なる。

 同社の8路線18区間を輸送密度(1キロメートル1日あたりの利用者数)で見ると、JR東日本とJR西日本が「利用の少ない線区」として公表する基準の2000人/日未満の線区は予土線、鳴門線、予讃線向井原~伊予大洲、土讃線須崎~窪川、牟岐線阿南~阿波海南の計200.6キロ、全体の4分の1以下に過ぎない。

 ほとんどの路線は鉄道単体では黒字化できないが、バスでは代替できない輸送密度3000~4000台で、営業赤字は上述の200.6キロが約22億円に対し、残る635キロが107億円だ。JR四国が現在の役割を保ったまま、経営を立て直すのは容易ではない。

 同社の輸送人員はコロナ禍後、定期、定期外ともに1割程度減少した。2023年5月には改定率12.82%、増収率9.4%の運賃改定を行い、鉄道運輸収入は2018年度レベルに回復したが、燃料費高騰による動力費増、施設や車両など修繕費の増で営業費は増加している。

 今後の人口減少で大幅な増収は望みづらいが、国の支援を活用した省力化・省人化による営業費の削減、毎時決まった時刻に発車するパターンダイヤ導入や、並行する鉄道と路線バスを相互に乗車可能なモーダルミックスの推進などの需要開拓、賃貸レジデンス事業の首都圏進出など、新規事業の拡大を進めている。

 輸送密度1000人/日を下回る路線に鉄道存続可否の議論が上がるのはやむを得ない部分がある。しかし、JR四国の規模と役割を持った鉄道が生き残れないようならば、日本のローカル線には絶望的な未来しかないだろう。