非鉄道事業を着実に
成長させているJR九州

 最後はJR九州だ。2024年度の営業収益は対前年度8.1%増の4543億円、営業利益は同25.2%増の589億円、経常利益は同21.7%増の595億円と大幅な増収増益となった。

 セグメント別に見ると運輸サービス業は営業収益が同3.4%増の1643億円、営業利益が同17.2%増の121億円、不動産・ホテル業は営業収益が同7.9%増の1383億円、営業利益が同26.9%増の314億円、流通・外食業は営業収益が同8.6%増の666億円、営業利益が同8.6%増の34億円だった。

 なお、運輸サービス業の営業利益が、期首計画から18.8%減となっているが、同社広報によれば「中期経営計画2022-2024」の目標を達成する見込みとなったことで、通期予想になかった「感謝一時金」を支給したことが主要因という。

 冒頭に記したように、JR九州の経営は今や運輸業と不動産・ホテル業の二本柱だ。2004年度の営業収益に占める運輸業の割合は58%だったが、2014年度には48%、2024年度は38%と、非鉄道事業を着実に成長させてきた。

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「中期経営計画2025-2027」は2027年度の目標値として、運輸サービス業は営業収益が対2024年度15%増、営業利益が同69%増の205億円、不動産・ホテル業は営業収益が同21%増の1670億円、営業利益が同8%増の340億円を設定している。鉄道事業が大幅な増収増益を見込んでいるのは、今年4月1日に平均改定率15%、増収率11.4%の運賃改定を行ったためだ。

 同社は2016年の株式上場にあたり、鉄道事業の固定資産5266億円をゼロに減損処理した。文字通りに受け止めれば鉄道事業、とりわけローカル線への投資は行わないという宣言だ。実際にはその後の設備投資もあり、2024年度の鉄道事業減価償却費は118億円となっているが、現実に存在する設備に対して過小である。

 JR九州の総延長2342.6キロのうち、輸送密度2000人/日未満は21線区計712.2キロで、全体の3割。被災長期運休路線を除いても、年間55.6億円(2023年度)の損失を計上している。既に指宿枕崎線指宿~枕崎間、日南線油津~志布志間など、「地域交通の将来のあり方」の議論に着手した線区もあるが、どの路線をどのように維持していくのか、将来像が問われるだろう。