青果物の流通をデータで見える化し
決算を電子化することで市場を変革する

――東京青果はダイヤモンド編集部の記事(特集『儲かる農業2025 日本の夜明け』の#19『大田市場のガリバー東京青果に筆頭株主の東京促成青果が“経営の刷新”を迫る!対立の発端は「横領疑惑」による会長解任劇』)について「全くの事実無根」との見解を公式ホームページで示しています。そこで、記事のどこが間違いなのか、具体的に指摘してほしいという質問状を送ったのですが、回答はありませんでした。川田親子に取材を申し込んでいますが、こちらも返事がありません。

 東京青果のコミュニケーションには問題があります。同社が、株主や従業員、マスコミなどと実のある対話をできるようになってもらいたいです。われわれは、常にオープンな姿勢で対話を呼び掛け続けています。

――株主提案では、経営陣の刷新を求めていますね。

 われわれの提案のポイントは三つ、(1)社外取締役5人と社内取締役3人の組み合わせによる経営体制の刷新、(2)株式持ち合いの解消に向けた自己株式の買い入れ、(3)会社の業績向上に向けた一般企業並みの配当(配当性向40%)の実現――です。

 いずれもガバナンスを改善するための提案ですが、最近、それに逆行する動きが明らかになりました。東京青果が、20億円もの資本を一般社団法人東京青果健康増進社団(法人登記によれば設立当初の代表理事は光太東京青果社長、監事は一光東京青果会長、その後、東京青果の役職員に交代)に拠出。同社団が東京青果の株式の買い入れを行っています。株式持ち合いと同様に、経営陣の株式シェアを事実上高める効果を持っており、会社法違反の疑いもある重大な問題です。こうした時代に逆行する行為を許せば、ますます改革が進まなくなるのではと懸念しています。

――説明会などでは、大竹さんが提唱する市場のデジタル化が具体性に欠けるという指摘もありました。

 日々の業務の中で、青果流通業界の現状を憂慮してきました。この業界は旧態依然たることがあまりに多い。FAX、伝票の手入力、不透明な取引といった古い習慣が改められなければ、将来の展望は開けません。

 DX(デジタルトランスフォーメーション)を含め、さまざまな改革をしていけば、青果流通業界はまだまだ発展し、農業の振興、食料の安定供給にも貢献できます。若い人から選ばれる仕事、誇りを持って取り組める仕事になると思います。

 そういった思いから、デジタル化の投資が必要だと川田親子に進言してきましたが、具体案が出てきたことはありません。しびれを切らして、青果物流通のデジタル化を提案したところ、光太社長が評価してくださり、プロジェクトリーダーを買って出てくれたのですが、一光会長が反対したために、途中でストップしてしまいました(詳細は、東京青果は本特集の#10『【独自】デンソーが提案した「農産物流通のDX」が拒否され卸売市場が危機!大田市場を牛耳る東京青果の深刻なガバナンス問題』参照)。

 株主提案での社外取締役の候補者には、市場のデジタル化の経験があるITに詳しい人材が含まれます。提案が実現した暁には、前向きな投資ができるようになるでしょう。

 具体的には、川上の農家が農産物を生産する際に付けた価値が、川下のスーパーなどに伝わるよう、流通に乗っている農産物の情報を見える化します。以前、デンソーが提案してくれたQRコードの活用も有力な選択肢になります。流通がデジタル化すれば、価値の情報が川下までつながるだけでなく、需要と供給の最適化も可能になります。

 代金決済の電子化も重要です。現在、取引先の倒産などに備えて、仲卸などが組合をつくって決済不能リスクを「無制限で」カバーしています。逆に言えば、東京青果は仲卸組合側に無制限でリスクを取らせている。決済を電子化して、見える化した農産物の位置情報などと照らし合わせれば、無制限に仲卸側にリスクを取らせる必要がなくなり、決済不能リスクに備えて積み立てている保険料のような負担を減らせるでしょう。結果的に、流通コストが下がり、川上や川下にも還元できると考えています。

 市場という公器を運営する立場の東京青果は、無駄な流通コストを下げるためのデジタル化などの投資計画を主導して作り、市場内の仲卸を巻き込んで改善していく責務があります。しかし、残念ながらそのような考え方は現経営陣にはないと言わざるを得ません。

 東京青果が改革の意思を示し、より良い会社になるまで、われわれは働き掛けを続けますが、今回の株主総会は一つの分岐点であり、青果流通業界を発展させることができるかどうかの重大局面です。株主の皆さんには、ぜひご賛同いただきたいと考えています。

Key Visual by kaoru Kurata, Kanako Onda