韓国の外科医はこのような状況を病的な症候群と考えずに、長年、患者に手術をしてきたと言う。
スマートフォンによる幻想と現実の境界線が曖昧になるにつれて、人はもういっぽうの人間、つまり人工的に作られた自分になろうとしていく。
韓国での美容整形に関しては、「それが良いか悪いかという倫理の問題ですらありません。単に美容整形とはそれだけのものだということです」と韓国の梨花女子大学校の教授ヘザー・ウィロビーは言った。
ここでの明るい見通しは、人間の肉体が絶えず向上したり、若さを保ったりできることだ。重力など問題ではない。体の新たな部分を修正しろという圧力が大きくなり続ける中で、腋毛を染めるのでも、肛門を漂白するのでも、ソウルに行けばやってもらえる。
好みに合わせて丸みがつくように、額や頭蓋骨の後部を削ってもらうことさえできる。
ソウルの形成外科医は次第に増えていくテクノロジーのスペックの原則を体に適用する専門家だ。韓国ではどんな人間でも、修正したい人がいるとは思えないような特徴ですら修正が可能なのだ。
自身の不満な部分をアプリで選択
「その他」っていったいどこなの!?
外見を修正するプロセスが画面上から始まるのは、たぶん驚きでもなんでもないだろう。
美容医療の予約アプリである〈バビトーク〉のライバル、〈カンナムオンニ〉はオンラインでの巨大な小売店だ。
そこでは美容整形を選んで会計ができて、割引を受けられることもあるし、医師ともつながれる。
車の購入アプリのようだが、対象物は整形手術や美容注入だ。ユーザーはまず自分が満足していない体の部分のアイコンを選ぶ。
肌
髪や生え際
鼻
目
額
口
胸
ウエストラインや腹部
生殖器
眉毛やまつ毛、体毛
歯
耳
その他(もっとも、わたしはここにあげた以上のものを想像できないが)
《同アプリ日本語版では、顔の形、肌、目、額、鼻、ボディライン、唇、胸、脱毛、デリケートゾーン、歯、ヘア、耳、その他》
あらゆる車種や型や特徴が載っている車の購入用アプリそっくりに、それぞれの項目にはサブカテゴリーがある。または、「wine.com」にアクセスしてさまざまな産地や、きりがないほどの種類からワインを選ぶようなものだ。
仮に、あなたが「顔」を選ぶとしよう。すると、この部位はとても具体的な領域という、めまいがするほど多様な部分に分解される。