アプリはこんな文を完成させるようにと促してくる。「わたしの問題は……」

頬の脂肪
二重顎
顎の輪郭
額のボリューム
こめかみ
頬骨
頬の脂肪が少なすぎること
出っ歯
もっと具体的な頬骨の部分(高すぎる、または低すぎる)

小帯[頬や唇の内側の粘膜と歯茎の間をつなぐすじのこと]の長さ
膨れた顔
頭の形
頭蓋骨後部のへこみ

《同アプリ日本語版では、輪郭ライン/顔の形、二重顎/顎の肉、頬の肉、エラ、頬骨の大きさ、額のボリューム/平らなおでこ、顎の筋肉、頬のたるみ、顎がない/短い顎、頬のへこみ、突出口、前頬骨のへこみ/前頬骨のボリューム、バッカルファット、しゃくれ、腫れ、こめかみのへこみ、人中の長さ、顎の梅干しジワ、頭蓋骨矯正、えくぼ、唾液腺の肥大、輪郭再手術》

 当然ながら、「以上のどれにも当てはまらない」は選択肢にない。

大量消費社会ではすべての
ショッピングが最適化されていく

 わたしがダウンロードした日、そのアプリは高校の卒業生に向けて韓国の大学修学能力試験後の宣伝を行なっていた。

「18歳の男女のための特別価格!」と。

 ユーザーがやるべきなのは、国による一発勝負の試験である大学修学能力試験を、最近受けたという証拠を見せることだけだ。

 わたしはさまざまなオプションの配列を見て、自己改善のテクノロジーは大量消費主義のほかのアプリとまったく変わらないと思った。もっと速く作業するためとか、人生を「最適化する」ために使っているインターネット・ショッピングのアプリや食料品のアプリと同じだ。

 または、もっと自分を向上させるためとか、人生をもっと楽にするため、おびただしい数の選択肢から選ぶようにと誘われるどんなアプリとも変わらない。

 テクノロジーが進歩すると、それを使うことによって買い物の方法も楽になり、自分を修正する方法も楽になる。

 外科や美容工学の進歩で、美容整形はだんだん値段が安くなり、前ほどは体を傷つけないもの、あまり大掛かりでないものになっている。

 かつては改良のために整形手術が行なわれたものが、今は注入物質やレーザーを用いたり、カミソリを使わずに「糸脱毛(スレッディング)」をしたりするものに変わっている。