日・欧で大きく違う
「社員」の定義

 ちょっと遠回りして話を始めたいのですが、皆さん、法律で「社員(Member)」とは、何を指すのかご存じですか。社員というワードは、民法の特別法である「会社法」の中の600条前後の法文に現れ、そこでは、株式会社の「株主」に当たる人という規定をしています。そう、従業員ではなく出資者こそが民法上の「社員」なのです(下の図表1)。

図表1:そもそも、民法上の「社員」の定義とは?同書より転載 拡大画像表示

 そもそも、こうした民法は欧州法を模して作られており、「社員」の概念も、欧州からの輸入となります。つまり欧州では、社員(メンバー)とは出資者≒株主≒資本家を指すことになります。

 では、日本で普通に使う意味の従業員は、欧州ではどのように規定されているのか。彼らは、「労働供給契約を会社と結んだ人」でしかありません。どうしてこんなに温かみのない言葉が用いられるのでしょう。

 それは、歴史を紐解かないとわかりません。

ギルド由来の強力な労働組合を
後ろ盾にした厄介な存在でしかない

 元々、欧州の資本家は、生産設備をそろえ、そこに職人を雇う形で事業を営んでいました。資本家は当然、安く職人を使おうと考えます。それに対して、職人たちは団結して対抗します。

 職人の親方たちは、同業で集まり、「ギルド」という組織を作っていました。これは中世の一時期、力をなくすのですが、産業革命以降のイギリスではギルドが再生し、親方たちが団結して、労働力の安売りを禁じ、ストライキで資本家に圧力をかけるという戦術を取りました。このギルドが発展して「労働組合」になるのです。

 だから、欧州の労働組合は、基本的に同業の労働者が集まって団結したもので、日本のように企業別に組織されたものとは形が全く異なります。