豊田章男氏の会長就任は、祖父・父の系譜に連なる感慨深いものであるが、ここへきて、同時にトヨタにおける豊田章男氏のリーダーシップや豊田家の存在などについて、“集大成的”な動きが表面化している。

 一つは、トヨタの本家・源流である豊田自動織機の株式非公開化だ。6兆円規模の資金を投じ、トヨタが主導して設置する特別目的会社がTOB(株式公開買い付け)を実施する計画で、このTOBには、豊田章男会長個人やトヨタグループの裏御三家といわれたトヨタ不動産(旧東和不動産)も参画している。

 豊田自動織機は、フォークリフトやカーエアコン用コンプレッサーの大手であり、クルマとしてはトヨタの「RAV4」などを製造。代表取締役会長には、一時、豊田章男社長の後継有力候補と見られていた元トヨタ副社長の寺師茂樹氏が就任している。

 今回の株式非公開化は、トヨタグループ内で複雑に株式を持ち合う構造の解消や長期的な成長戦略の構築など、経営の自由度を高める狙いがあるとされる。同時に豊田章男氏がトヨタグループ統率に前面に出ることでグループを結束させる、“豊田家”回帰との見方もある。

 豊田自動織機はトヨタグループの祖である豊田佐吉氏が開発した自動織機を製造・販売する会社として創業されており、トヨタグループにとっては“本流中の本流”企業だ。それ故、祖業の企業を資本市場から切り離しトヨタ本家を守るという、豊田章男氏や豊田家の意向が隠されているとみる向きも多い。

 さらに、豊田章男氏が自動車会議所会長に就任する6月10日には、懸案だったトヨタ子会社の日野自動車と三菱ふそうの経営統合がようやく最終合意する見通しとなった。トヨタと日野自、三菱ふそうと親会社の独ダイムラートラックの4社が持ち株会社設立と日野自・三菱ふそうの完全子会社化を発表する予定だ。

 日野自と三菱ふそうの統合も、豊田章男会長マターの懸案事項であった。長期の認証不正でブランドが失墜した日野自をダイムラートラック傘下の三菱ふそうと統合し、日野ブランドを生かすことで商用車再編の中で生き抜くことを判断したのだ。