豊田章男氏は09年にトヨタ社長に就任し、リーマンショックでの赤字転落や品質問題といった“嵐の船出”となりながらも、 14年間、現場重視の「町いちばん」と「もっといいクルマづくり」を重視してきた。その結果、25年3月期には売上高が48兆円、純利益は4.7兆円と圧倒的な数値を記録するなど業績を高めてきた。独フォルクスワーゲングループを抜き、世界トップの自動車メーカーの地位を確立させたのも事実である。

 トヨタ社内では、23年4月に腹心の佐藤恒治氏に社長を譲ったほか、業界活動でも日本自動車工業会(自工会)会長職を23年末で辞している。自工会会長としては、2度目の登板で異例の2期6年を務め、自工会改革やモビリティショーの変革など強力なリーダーシップを発揮した。

 豊田章男氏の自動車会議所会長就任は、くしくも豊田自動織機の株式非公開化の動きや日野自・三菱ふそう統合決着ともタイミングを同じくしていることで、豊田章男トヨタ会長としての“大願成就”や“集大成”が一気に進展したように受け止めたくなる。

 この5月3日に69歳を迎えた豊田章男氏には、23年2月に逝去された父の豊田章一郎氏に加えて“第二のおやじ”とリスペクトしていたスズキの鈴木修氏も昨年24年12月に鬼籍に入ったことで、改めてトヨタグループの統率に加えて“日本モビリティ連合”を統率していく動きが期待されるのだ。

 特に、自動車会議所での目下の課題は“自動車税制改革”だ。従来の「クルマの税金は取りやすい」というイメージから、100年に一度のモビリティ変革に対応する抜本的なクルマ税制への改革に向けて「豊田章男流」を発揮できるか、注目されよう。

(佃モビリティ総研代表 佃 義夫)