一方の〈市場性〉とは、顧客の数である。厳密には、〈市場性〉は顧客数×単価となるが、本稿では〈市場性〉=顧客数として進め、詳細は後述する。そして、〈独自性〉と〈市場性〉の「両立」こそが事業の中核となるアイデアの核心である。裏を返せば〈独自性〉と〈市場性〉が通常は相反することを意味する。

 この関係は図にすると分かりやすい。縦軸に〈独自性〉、横軸に〈市場性〉をとると、アイデアはこの曲線のどこかに位置することになる。傾向としては左上か右下のどちらかに分かれることが多い。

 左上は〈独自性〉が高いが〈市場性〉が小さい、つまりその独自性が一部の人にだけ支持される「ニッチ」なアイデアが該当する。それに対して右下は〈独自性〉が低いがゆえに多くの人に支持される「マス」なアイデアが該当する。

図P23同書より転載 拡大画像表示

相反する2つの要素を両立させ
イノベーションを起こした企業

 ファッションブランドを例に挙げると、左上にはパリコレクションで新作を発表するようなファッションブランドが該当する。ここでは「パリコレ」としよう。パリコレの服はトレンドの先端をいく斬新なデザインであり、万人受けを目指したものではない。つまり、〈独自性〉が高く〈市場性〉は小さい。

図P25同書より転載 拡大画像表示