
世界の人口比率0.2%で、ノーベル賞受賞者2割を輩出しているユダヤ人。彼らが大事にしている言い伝えに「知恵は決して盗まれない」というものがある。教養はよりよく生きることのヒントとなり、人間を知ることにつながる「最強の武器」なのだ――。※本稿は、池上彰『50歳から何を学ぶか 賢く生きる「教養の身につけ方」』(PHP研究所)の一部を抜粋・編集したものです。
「知恵は決して盗まれない」
というユダヤ人の教え
ユダヤ教の経典に、タルムードがあります。
タルムードとは、古代ヘブライ語で「学習」「研究」を意味する言葉であり、ユダヤ教の口伝律法と学者たちの議論を書きとどめた議論集を指します。
ぜひ読みたい、とタルムードの全文日本語訳を探しているのですが、まだ見つかっていません。
ユダヤ教徒の中には超正統派と呼ばれる人たちがいて、全部で2711ページあるタルムードを1ページずつ、約7年半かけて学ぶ宗教学校も存在します。
このタルムードが伝承されることで、ユダヤ人たちが共有する知恵や英知が次の世代に継承されています。そこからは、ユダヤ人の「知恵は決して盗まれない」という教えが見えてきます。
ユダヤ人は古代から差別され、住んでいた地も追われることになり、世界中に散らばって信仰とともに生き抜いてきました。
住んでいた地を追われて離散することをギリシャ語で「ディアスポラ」と言います。ユダヤ人はそうして離散してからも、ユダヤ教の教えや習俗を頑なに守り続けたのです。