荻原 自分の裁量で使えるお金がある程度はないと幸せとは思えないけれど、それがものすごく増えたところで幸福度は変わらないということですね。どんなにお金があったって『クリスマス・キャロル』の主人公スクルージみたいな人もいるわけですから。

鎌田 おもしろい話があるんです。アメリカのハーバード大学の研究で、「自分のことを幸せだと思う」という学生と、「幸せとは思わない」という学生のその後を16年間調査したんです。すると、幸福度の高かった学生は、低い学生よりも1年間で275万円も収入が高かったそうです。自己決定ができて幸福だと感じている人には、お金もついてくるということです。

荻原 それ、すごくよくわかります。だって「自分は幸福だ」と思って輝いている人と、「自分は不幸だ」と思って暗い顔をしている人、会社はどちらを採用したいかといえば、あきらかに前者ですよね。プラスのエネルギーをもっている人のほうが、絶対に得なんです。

鎌田 アメリカのマウントサイナイ医科大学の研究では、人生の目的意識をもつ人は心臓血管疾患による死亡リスクが低いこともわかっているんです。

荻原 気持ちのもちようで、幸せもお金も健康も手に入るっていうことですね。

「幸せホルモン」が
心身に与える好影響

荻原 鎌田先生に伺いたかったんですが、幸せって、実はホルモンともすごくかかわっているんですよね?

鎌田 そうそう。これも「無形浮遊資産」のひとつなんですが、セロトニンっていうホルモンは「幸せホルモン」と呼ばれているんです。うつの患者さんを調べると、セロトニンの分泌が足りていない。だから治療薬にはセロトニンに関係ある薬が使われるんです。

荻原 薬を使わなくてもセロトニンは増えるんですか?

鎌田 増やせます。絶対にやってほしいことは、朝、太陽の光を浴びることです。セロトニンは腸でつくられるんですが、太陽に当たると脳内で幸せを感じるんです。