Photo:Katsumi Murouchi/gettyimages, Kuninobu Akutsu
経済学者や経営学者、エコノミスト78人が選んだ経済、経営に関わる優れた本をランキング形式でお届けする特集『ベスト経済書2026』。識者から一定の評価を得て、今回ベスト経済書にランクインしたのは55冊だった。上位の顔触れを見ると日本経済の課題と病巣が浮かび上がる。最新の論点を把握し、視座を広げたいビジネスパーソンには必読の書といえるだろう。特集『ベスト経済書2026』(全10回)の#1ではベスト10に入った本を紹介する。(ダイヤモンド編集部編集委員 竹田孝洋)
経済学者、経営学者、エコノミスト78人が選んだ
最新の「ベスト経済書」トップ10
毎年恒例のベスト経済書企画だが、今回は経済学者、経営学者、エコノミスト78人の回答を基にランキングを作成した。調査期間の切り替えに伴い、対象となる出版期間は2024年秋ごろから25年末までとなっている。
識者から一定の評価を得て、ベスト経済書にランクインしたのは55冊だった。今回はベスト10を、本の趣旨や評価と共に紹介していく。
10位は『スティグリッツ 資本主義と自由』(27点)だ。著者はノーベル経済学賞受賞者のジョセフ・E・スティグリッツ・米コロンビア大学教授である。
市場原理主義が掲げる「自由」は、実際には富裕層や大企業の自由を広げ、多くの人々の生活の自由を狭めてきたのではないか。本書では、格差、独占、情報の非対称性を踏まえ、真に自由で公正な資本主義の再設計が論じられている。
9位は、黒田明伸・東京大学名誉教授が書いた『歴史のなかの貨幣 銅銭がつないだ東アジア』(32点)である。
東アジアで流通した銅銭を手掛かりに、貨幣とは何かを歴史から考える一冊だ。国家が発行する通貨という枠を超え、商人や地域社会の取引、海を越えた流通が貨幣の信用を支えていたことが描かれている。
8位の『現代日本の金融システム パフォーマンス評価と展望』(33点)の著者は、内田浩史・神戸大学大学院経営学研究科教授である。
バブル崩壊、不良債権処理、金融危機、長期停滞を経て、日本の金融システムは何に成功し、何を十分に果たせなかったのかを検証する。過去の金融政策や金融制度の変遷を振り返り、成長力を支える金融の在り方を展望している。
6位には336点で2冊が並んだ。1冊目は『競争なきアメリカ 自由市場を再起動する経済学』。著者は米ニューヨーク大学スターン経営大学院教授のトマ・フィリポン氏である。
米国では競争が弱まり、企業の市場支配力と利潤率が高まっている。その結果、消費者は高い価格の負担を強いられている。本書は、通信、航空、医療などの事例を通じ、独占・寡占が自由市場をむしばむ構図を示し、その背景にロビー活動があることを明らかにしている。
同じく6位に入ったのが、大湾秀雄・早稲田大学政治経済学術院教授の『男女賃金格差の経済学』である。
男女の平均賃金を単純に比較するだけでは、格差の実態は見えない。本書は、人事データや企業との共同研究を基に、職務経験、配置、昇進機会、上司のバイアスが賃金差を生む仕組みを解明している。
次ページはいよいよベスト5。現在の日本経済が抱える課題、病巣を論じた本が上位に並んだ。最新の論点を把握し、視座を広げたいビジネスパーソンには必読の書といえるだろう。







