ひろゆきPhoto:JIJI

「論破王」とも称されるひろゆきだが、彼の論破法の根底にはプログラミング思考があり、それは現実のコミュニケーションにおいても活かすことが可能だという。ひろゆき流コミュニケーション術の真髄とは?※本稿は、戸谷洋志『詭弁と論破 対立を生みだす仕組みを哲学する』(朝日新書)の一部を抜粋・編集したものです。

圧倒的論破力の背景にある
プログラミング思考

 議論に対するひろゆきの考え方は、彼がもともと生業としていたプログラミングの思考と、ある意味ではよく似ている。

 プログラミングとは、インターネット上にウェブサイトなどを構築する際に、その一つ一つのデザインや挙動を、コンピューターに対して言語によって命令することである。

 普段、何気なく閲覧しているサイトであっても、実際にはとても複雑なソースコードによって設計されている。たとえば、文字を太字にしたり、斜体にしたりすることも、言語によって命令が記述されているのだ。

 プログラマーは、そうした言語に習熟し、頭のなかで思い描いた通りのウェブサイトを構築し、問題を解決するために、もっとも合理的なソースコードを設計することができる職人である。ひろゆきは、そうしたプログラマーの独特な価値観を、次のように説明している。

 まず、プログラマーはコンピューターに対して、正確に命令することを求められる。もしもほんの些細な点であっても、プログラマーがミスをしていたら、コンピューターはエラーを起こして反応しなくなってしまう。コンピューターの方が、プログラマーの意図を汲むことはない。そこで求められていることは、正しく命令することで、思い通りの挙動をコンピューターにさせることなのだ。