ひろゆきによれば、プログラミングを学ぶことによって身に付けられる能力として、「情報整理術、俯瞰(ふかん)で物事を見る目、相手に合わせて指示するやり方、物事を効率化する方法、数値化する力、優先順位を見極めること、仮説を立てる癖、論破力、シミュレーション力、仕事を熟練させる方法、アイデアを形にする能力、模倣するショートカット術など」が挙げられる。

 ここに含まれているいくつかのスキルは、一般的に、他者とのコミュニケーションにおいて望ましいものとして評価されないものである。

 たとえば、「模倣」はその最たる例だろう。コミュニケーションにおいて、相手があからさまに誰かを模倣し、自分が本当には思っていないことを言い始めたら、私たちはそれをいぶかしく思うに違いない。「誰かの真似をしていないで、あなたが思っていることを、あなたの言葉で話してほしい」と要求したくなることさえあるだろう。

 現実のコミュニケーションにおいて、私たちは自分の言葉で語ることを、ある種の美徳であると見なしているからだ。

 それに対して、プログラマーはそうした発想を取らない。ある問題を解決するために、すでに優れたソースコードが存在するならば、それを模倣することは決して悪いことではない。それに対して、オリジナルのソースコードを一から設計し、それによって構築されたウェブサイトが結局不安定なものになってしまうなら、本末転倒である。目的を達成するために優れたものを模倣することは、推奨されるべき行為なのである。

 そうした思考が議論に持ち込まれるなら、誰かの発言を模倣することは、決して悪いことではないだろう。もちろん、自分の言葉で語ることが、その議論の目的ならば、模倣はするべきではない。しかし、相手を論破することが目的であり、そのために必要な手段であるならば、模倣することを避けるべき理由は何もない。

「それってあなたの感想ですよね?」は
議論のソースコード

 実際、ひろゆきは議論における優れた「ソースコード」すなわち「決めゼリフ」を持っているように思える。「それってあなたの感想ですよね?(編集部注/ひろゆき自身の説明では、彼はこのセリフを過去に一度しか使っていない)」や、「嘘つくのやめてもらっていいですか?」、「『はい』か『いいえ』で答えてください」などがそれだ。