
下水道の老朽化が進み、更新費用がかさみ始めても事業として採算が取れていれば、財源を捻出できる。財源が不足していても料金を値上げできればいいが、すでに料金の水準が高ければ値上げの余地は少ない。特集『上下水道危険度ランキング あなたの街の管があぶない』(全4回)の#2では、老朽化対策への耐性を測る危険度ランキングを作成した。
すでに下水道料金が高い自治体は
維持更新費用の調達が難しくなる
908円と5583円。これはそれぞれ東京都府中市と北海道三笠市の2023年度の20m3当たりの下水道料金だ。公共下水道事業を営む自治体における日本で最低料金と最高料金である。6倍強の開きがある。
なぜ料金格差が生じるのか。
要因の一つには、人口の密集度合がある。人口密度が低い地域の方が高い地域より料金は高くなりやすい。一定の長さの管に対する利用人数が少なければ、その分一定の長さの管渠に対する料金収入が少なくなる。
維持更新費用は管の長さにある程度は比例するから、人口密度の低い地域は料金を高めに設定せざるを得ない。また、整備が早く進んだ
現時点での料金が安ければ一定額の値上げの収入改善効果が大きくなる。高ければその分小さくなる。
老朽化度が高く、今後維持更新費用がかさむことが見込まれ、かつ事業採算が悪い場合に、料金水準がすでに高ければ維持更新費用を料金引き上げで調達することが難しくなる。
財源難のために維持更新費用を抑制することになれば中長期的には下水道の設備、管の老朽化が進みやすくなる。陥没のような事故が起きる背景には、地盤の固さ、管の形状などの老朽化以外の要因も絡んでくるが、老朽化が進めば陥没が起きる可能性が大きくなる。
そこで、下水道管の維持可能性を測るために管渠、汚水処理施設など設備の老朽化度、事業採算に料金の高低も加味した危険度ランキングを作成した。
次ページでは、下水道危険度ランキングを公開するとともに、維持更新を進める自治体の実態を取り上げる。