スティーブ・ジョブズがクラウド・レントという宝箱を開けるきっかけとなった天才的なひらめきとは、社外の「サードパーティ開発者」にアップルのソフトウェアを無料で使わせ、開発したアプリケーションをアップルストアで販売するという斬新なアイデアだった。
これによって、たちまちタダ働きの労働者と封臣資本家が生み出され、彼らの働きによって、アップルのエンジニアだけでは到底つくり出すことのできない多種多様なアプリが、iPhoneユーザーのためだけに提供されるようになった。
たちまち、iPhoneはただのかっこいい携帯電話以上の存在になった。ほかのスマートフォンにはない、iPhoneならではのさまざまな楽しさや機能がここでは手に入るからだ。たとえライバルのノキアやソニーやブラックベリーがより賢く、速く、安く、美しい携帯電話を急いで作ろうとしたところで、痛くも痒くもなかった。iPhoneだけがアップルストアをはじめた。ではなぜ、ノキアやソニーやブラックベリーは自社ストアを開発しなかったのか?もう遅すぎたからだ。
アップル以外で自社ストアを
開発できたグーグルの戦略
すでにあまりに多くの消費者がアップルと契約していたし、サードパーティ開発者は、ほかのプラットフォームのために時間と労力をかけてアプリを開発しようとは思わなかった。アップルのためにタダ働きをするサードパーティ開発者は、主に少人数のグループか中小企業であり、アップルストアを通して事業を運営するよりほかに生き残る道はなかった。その代償は?総売上の30パーセントのレントをアップルに支払わなければならない。こうして、アップルストアという世界最初のクラウド封土の肥沃な土壌で封臣資本家階級が育っていった。
アップルのほかに唯一、多くの開発者に自社ストアのアプリを開発させることができたコングロマリットがあった。グーグルだ。iPhoneが発表されるはるか以前に、グーグルの検索エンジンはGメールやユーチューブを含むクラウド帝国の核になっていた。その後、ここにグーグルドライブ、グーグルマップ、そのほか一連のオンライン・サービスが搭載された。すでに支配的なクラウド資本だったグーグルは、その資本をさらに活用するため、アップルとは違う戦略を取った。