日本郵便の不祥事「民営化前の意識のまま」が原因か、物流業界関係者も呆れた実態とは日本郵便の軽車両。「点呼」を軽視した代償は大きい 写真:カーゴニュース

日本郵便の点呼未実施による、貨物自動車運送事業の許可取り消しが波紋を広げている。国土交通省は6月5日、同社の事業許可を取り消す方針を固め処分案を通知。同社が保有する全国約2500台の1t以上の貨物車両が、許可を再取得するまでの5年間使用できなくなる異例の事態となる。浮き彫りになったのは、日本郵便の意識が極めて薄く、「点呼」という文化が根付いていなかった現場の実態だ。(カーゴニュース編集部)

*本記事はカーゴニュースからの転載です

物流業界関係者「あまりの実態に呆れた」
日本郵便は「民営化前」の意識のまま

 今回の事案は、2025年1月に兵庫県小野市の郵便局で数年にわたって法定点呼が適切に行われていなかったことに端を発する。日本郵便が全国の3188局の郵便局を調査した結果、75%に相当する2391局で点呼業務における不備があったことが判明した。

 事態を重く見た国交省は4月下旬以降、貨物自動車運送事業法に基づき、日本郵便への特別監査に踏み切った。その結果、関東運輸局管内だけで許可取り消しの基準である違反点数「81点以上」を大幅に上回る違反が確認されたため、全国での集計を待たず、許可取り消しの方針が決まったもの。

 物流業界関係者からは「あまりの実態に呆れた」という声が多く聞こえてくる。運行管理者がドライバーに対して酒気帯びの有無や健康チェックを行う点呼業務は、貨物自動車運送事業法で義務付けられた重要な業務であり、いわば安全の基本中の基本。

「一部の営業所などで不備があることはまだ理解できるが、これほど広範囲に違反していたとすれば、日本郵便の中で“点呼という文化”がなかったと思わざるを得ない」(業界関係者)と指摘する。

 実は、日本郵便の事業が貨物自動車運送事業法の法制下に置かれたのは2007年10月の郵政民営化から。当時の郵便事業会社(現・日本郵便)が民間企業となったのを機に、他の民間トラック事業者と同様に同法の監督対象に置かれることになった。

 しかし、それ以前から、ゆうパック(郵便小包)などの事業は行っていたため、貨物運送事業者としての意識の切り替えがなされないまま現在に至ってしまったとの推論が成り立つ。ある日本郵便関係者は「当時から社内監査で点呼を対象にしたという話は聞いたことがない」と振り返る。