トップの口から飛び出した
「東西線と相互直通運転」発言

 ここまでは既に発表済みか、予想の範囲内の取り組みだが、5月15日に行われた2025年3月期決算説明会において後藤高志代表取締役兼CEOが、新宿線と東京メトロ東西線の相互直通運転の実現に向けて取り組んでいきたいと発言したことには驚いた。

 この構想自体は以前から存在し、2024年3月期決算説明会においても「東京メトロさんとの東西線の相直について言えば、これはもちろん相手のあることですから、現時点においては当然のことながら確定的なコメントはないわけですけれども。(略)これもそういった観点から言えば、西武新宿線の価値向上にも寄与するだろうと考えております」と述べていた。

 それが今年は「その後、昨年の10月でしたかね、東京メトロさんが東証に上場されるということで、上場企業としてこれから東京メトロさんがスタートされた訳ですから、こうした東西線相直の話は、これからも私も含めてしっかりやってまいりたいと思いますが、これはぜひ実現させていきたいと考えております」として、さらに一歩踏み込んだ内容になったのである。

 既に具体的な動きはあるのか西武鉄道広報部に尋ねたところ、「前提として、新宿線の抜本的な利便性向上に向けて可能性を模索している段階で、具体的なことは今の時点ではまったく決まっていない。当社だけで進めることはできないので今後、検討を進めていく」として、あくまで構想の域であると強調する。

 このような大きな案件は、両社である程度の方向性を共有した上で発表するものだが、鉄道業界では珍しい前のめりの発言である。東京メトロもやや戸惑っている印象だが、それだけ新宿線の価値向上への熱意が大きいと受け止めよう。

 ただし、東京メトロも全く寝耳に水というわけではないだろう。元西武鉄道常務取締役の故・長谷部和夫氏は2014年の鉄道誌『レイル』で「メトロ落合駅と新井薬師間の連絡線を建設し、東西線と新宿線との相互直通運転をする件については、都交とメトロとの統合問題のお陰で一時ストップになってしまっているのは、なんとも残念なことです。一刻も早く解決されることを願っています」と記している。