トヨタがテスラやBYDを追いかけて進める戦略
そうしたトヨタの動きの背景には、主要メーカーが特定の分野に集中して投資を行う動きが鮮明化したことがある。米テスラや中国のBYDは、電動車やソフトウェアが車両性能を決定するソフトウエア・ディファインド・ビークル(SDV)の開発に集中的に取り組んでいる。
中国の自動車メーカーにとって、政府の産業補助金政策は重要な追い風だ。それを生かして、シャオミやファーウェイといったIT先端企業も新規参入を果たした。これらIT企業の進出によって、車載用ソフトウエアやEV開発分野で投資は増加傾向にある。
大量生産体制を整えたBYDは、価格競争によって需要を確保しようとしている。東南アジアの自動車市場では、中国勢がわが国の自動車メーカーからシェアを奪うなど、世界の自動車産業界の競争は激化している。
環境の変化に対応するため、商用車ビジネスを乗用車事業から切り離す企業は増えていた。トラックと乗用車の機能、サイズ、使い方は異なる。トラックの場合、モデル・チェンジのサイクルも長い。つまり元々、乗用車とトラックなどの商用車のビジネスモデルは似て異なるものだ。それを、一社が全て取り仕切るのは必ずしも有効ではないだろう。
18年、独フォルクスワーゲンは、スカニアなどの買収によって陣容が拡大したトラック事業を乗用車事業と分離した。そこで発足した企業が、トレイトンだ。フォルクスワーゲンはトラック事業を外出しすることで、EV分野に集中的に投資を行い、ディーゼルエンジン不正問題によって不安定化した収益基盤を立て直そうとした。
21年、ダイムラー(当時)も、高級乗用車事業を運営するメルセデス・ベンツとダイムラートラックを分社化。現ダイムラーはメルセデスの連結対象から外れた。ダイムラーとメルセデスは、それぞれ独立して事業を運営する方が効率的と判断したのである。
こうした合従連衡を経て、ドイツの自動車メーカーは電動化技術の開発を加速しようとしている。トヨタも電動化に加え、車載用ソフトウエア分野でのプロダクト・ポートフォリオの拡充を急いでいる。半導体世界大手のエヌビディアやウェイモ(Alphabet傘下の自動運転車開発スタートアップ)との提携も、そうした取り組みの一つだ。