マレリが再破綻…自動車産業で優勝劣敗が鮮明に

 トヨタは、全て自分で差配する自前主義から脱却しつつあるのだろう。今回の経営統合により、トヨタは今まで以上に乗用車に集中できる。先端技術との新しい結合も、これまで以上に注力できるはずだ。

 ダイムラーも、トラック分野で同様の戦略を重視。アマゾンドットコムやウェイモと組んで自動運転技術の早期実用化も目指している。日野と三菱ふそうの統合をかじ取りすることで、トラック分野で全方位型のプロダクトの拡充を目指すだろう。

トヨタが合意した日野自動車の経営統合、“裏の標的”が「テスラとBYD」だと言えるワケPhoto:DarthArt/gettyimages

 さらに、日野や三菱ふそうと車体や部品の共通化にも取り組むことになるはずだ。それにより、重複した部品製造事業が売却される可能性は高まる。また、商用車ビジネスの収益拡充のため、トラック・バス関連の資産を取得する展開も想定される。自動車業界全体で「カーブアウト型の買収」(特定の資産の取得が目的)が増えそうだ。

 また、中国政府はEV乗用車分野に続き、トラックやバスの分野でも政府系メーカーに統合を促し、世界シェア奪取を狙っているはずだ。あるいは台湾の鴻海精密工業はEVの受託製造(OEM)を重視し、三菱自動車との協業も発表した。自動車分野にもデジタル家電分野で浸透したような水平分業の波が押し寄せている。

 それに伴い、乗用車分野では、より集中的に先端技術に投資を行う重要性が高まる。トヨタはそれを念頭に、先手を打ったということだろう。

 翻って、他のわが国自動車メーカーは楽観できる状態ではないだろう。特に、日産自動車の再建が難航している。同社の業績悪化により、マレリ(旧カルソニックカンセイ)は再び経営破綻してしまった。

 今後も自動車業界で、事業ごと資産を売却・取得する動きが増えるだろう。そうした変化に素早く対応できるかで、優勝劣敗は鮮明化するはずだ。日野と三菱ふそうの統合は、そうした変化の嚆矢(こうし)とみることができる。