悩む男性写真はイメージです Photo:PIXTA

どんなに仕事がつらくても、「傷ついた」と言い出せない人は多い。「能力がないと思われる」「評価が下がるのが怖い」そんな空気の中で、多くの人が不満を飲み込んでいるからだ。たが、本当に問題なのは言えないあなたではなく、言わせない職場の構造だ。なぜ「つらい」と言うことが許されないのか。その理由を、今こそ知っておきたい。※本稿は、勅使川原真衣『職場で傷つく~リーダーのための「傷つき」から始める組織開発』(大和書房)の一部を抜粋・編集したものです。

「職場の傷つき」を訴えても
「個人的なこと」と処理される

 よほどのことがない限り、組織の喫緊の課題に「個人的なこと」は入ってきません。ましてや、もう部下がつけどつけど辞めてしまって、部署がからっぽになる!くらいのパンチの利いた、災害級の事態に見舞われない限り、「職場の傷つき」なんてものは、議論の俎上にあがることもなく、さして問題視もされないわけです。

 そこで着目したいのは、「職場の傷つき」が「個人的なこと」だとすることは、誰にとってどんないいことがあるのか、です。

 妙な問いに聞こえるかもしれません。しかし社会学では、現状に対して、「誰目線の、どんな意図が入り込んで、現状システムができているのか?」と考えることは視座の基本であり、社会・組織を眺め直す際には不可欠な問いです。

 ある社会システム(しくみ)によって

・得をするのは誰か?
・口を塞がれるのは誰か?

 これを表層に惑わされることなく、深掘りしていきましょう。