トランプ関税負担「8割」は米国の消費者・企業、FRBは「9月利下げ再開」で景気後退回避!?Photo:Christopher Furlong/gettyimages

トランプ政策3本柱、米経済への波及
景気の鍵を握るのはFRBの利下げ

 8月7日に発足200日を迎える第2次トランプ政権だが、朝令暮改が続いた相互関税などの関税政策は、ここへきて各国との見直し交渉合意が進展し、不確実性はやや後退した。

 しかし、合意後も鉄鋼・アルミや自動車などの個別品目への関税のほか、相互関税も日本・EU・韓国向けは15%、新興国向けは10~40%など高関税が維持される方針に変わりない。米国の平均実行関税率は約19%と、1930年代以来の高水準に定着する見込みだ。

 これに先立ち7月4日の独立記念日には、減税法「One Big Beautiful Bill Act(OBBBA)」が成立した。トランプ減税恒久化などの各種減税の一方で、IRA(インフレ抑制法)の脱炭素電源・EV向け税控除の大部分廃止や不法移民対策など、選挙公約を幅広く盛り込んでおり、政権運営の柱になるだろう。さらに、AI戦略「America's AI Action Plan」が公表され、AI技術基盤の強化を目指した規制緩和を加速させている。

 関税・減税・規制緩和の3つに集約される「トランポノミクス2.0」の本格化は、米国経済にどのような影響を与えるのか。

 とりわけ、影響が大きい関税引き上げのコストの大半は米国に転嫁され、米国の家計が44%、米国企業が36%を負担すると見込まれる。これにより、家計の実質所得は▲1.1%、企業の利益も1年程度で▲0.8%下押しする見通しだ。

 こうした関税政策のマイナス効果をトランプ減税が一定程度は下支えするが、効果は限定的で関税負担の増加をカバーするほどの力はない。個人消費や設備投資の抑制で成長鈍化は避けられそうにない。

 今後の米経済の動向の鍵を握るのは、FRB(米連邦準備制度理事会)が、関税引き上げによるインフレ再燃懸念がある中で、利下げに踏み出せるかどうかだ。