自分のキャリアを考え、迷う。また考え、また迷う…
終身雇用、年功序列という日本型雇用が影を薄めつつあるなか、就労における個々人のキャリアがプライオリティを高めている。浦坂教授は、著書『あなたのキャリアのつくり方――NPOを手がかりに』(*4)で、キャリア構築のために、「普段から各方面に仲間を作っておくこと、つながりをもっておくこと、けもの道(現場)の存在を知っておくこと、そして何よりも『勉強すること』」と明言している。
*4 書籍『あなたのキャリアのつくり方――NPOを手がかりに』(浦坂純子著/2017年2月刊/ちくまプリマー新書)
浦坂 自分のキャリアとどう向き合い、どうつくっていくのかは、人それぞれかと思いますが、考え、迷い、さらに考え続け、迷い続けてもいいのではないでしょうか。日々考え、迷う。目の前の仕事をこなしながらも、また考え、また迷う。時に動く。それを続けることで、いつか何かが見えてきて、キャリアの扉が開かれるのではないか、と。毎日毎日同じ仕事をするなかで、意識的に何かに触れてみたり、誰かに偶然出会ったりすることが、不思議と次につながっていくような気がします。現状に特段の不満や問題がなくても、「このままでいいのか?」という思いは誰しもが抱くものですし、そういう考えや迷いが頭の片隅にあることで、ふとした時にテレビで誰かが語った言葉が引っかかってきたり、書店で眺めた本のタイトルが気になって手に取ったり、小耳に挟んだ話が何かのヒントになったり……。自分のキャリアに関するアンテナの感度が高まっているからこそ、キャッチできる情報があると思います。
浦坂教授は、キャリアを意識し続けながら、まずは毎日の仕事をきちんと行っていくことが大切だと説く。
浦坂 そして、「あっ、いまだ!」というチャンスが訪れたら、タイミングを逃さず動けるように準備をしておくこと。もちろん、思い立ったらまず動いてみてもいいのですが、そこまでの状況にない時は、目の前のやるべきことをこなしながら、アンテナの感度を高めておけばいい。私自身もそうやって今日に至ったようなところがあります。積み重ねた仕事がどなたかの目に留まってお声がけいただいたこともありましたし、自分の専門とは異なる仕事でも、やってみたら意外に長く続いて視野が広がったこともありました。旧約聖書に「神のなさることは、すべて時にかなって美しい」という言葉がありますが、自分にとって必要なことが、必要な時期に与えられていると考えると、どんなことであっても前向きにとらえられるのではないでしょうか。

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