乾杯写真はイメージです Photo:PIXTA

百貨店のお客様相談室で数々のトラブルを解決し、苦情対応のプロとなった関根眞一氏。彼が務める百貨店内の居酒屋で起きたクレームを解消した、ある“奇策”について紹介する。※本稿は、関根眞一『カスハラの正体〈完全版〉となりのクレーマー』(中公新書、中央公論新社)の一部を抜粋・編集したものです。

茨城県つくば市勤務時代に
対応した百貨店のクレーム

 今回ご紹介するのは、つくばに赴任していたときの事例です。冬でも平均気温が9度前後と暮らしやすい温暖な気候が特徴で、市の北部には風光明媚(めいび)な山があり、雄大な自然と、高度な都市機能が両立していることも住みやすさの理由です。

 この街には日本有数の大企業の本社や研究センターも数多くあり、研究学園都市とも呼ばれています。さらに、芸術的には音楽、歌舞伎や各種国際コンクール等の開催も多く、恵まれた環境です。

 私はこの地でも、お客様相談室長を務めました。車社会、食と地元民との接点は、生きていることが心から楽しくなるような生活でした。ここで遭遇した苦情もたくさんあり、土地柄特殊な強敵もたくさんいましたが、受けながら学びうまく対応ができたと思います。

 馴染みの店も沢山できました。中でも「天将」という天ぷら屋さんにはよく行きました。このお店のおかげで、2件の苦情が「地元ならでは」のやり方で解決できました。

 なんだか分からないでしょうから、そのうちの1件をじっくりお話しします。

 この事例のお客様は頑固者、50代後半の個人経営の指物師で、気風のよい方でした。百貨店内の居酒屋で出したお通しが傷んでいたことが問題の始まりでした。