居酒屋の店長になぜ傷んでいたのか確認をすると、この品はランチセットの残り物で、そのこと自体に問題はないのですが、保管が悪く冷蔵庫に入れてありませんでした。これでは最低のお店です。時期は6月ですから、食べ物が1年で最も傷みやすい時です。この件には、怒るより呆れることが先でした。昼食に使用した温度管理が出来ていない食材は、処分するのが当然です。残っていた数を聞き、処分を終えたか確認して放免しました。

 翌日、私がお客様の自宅を訪問しました。対応した部下も連れていきます。初対面ではない者を同伴すれば、多少気分が違うはずですから。

 入り組んだ場所に工場がありました。硝子戸を開け、声をかけ、出てきたご主人にご挨拶をして、昨夜の謝罪と留守を詫びました。

クレームに理解を示しつつも
その後の対応に頭を抱える

 工場のおっさんというムードはなく、最初から居酒屋の経営状況、本社の所在地、社長の名前、店舗数などについて質問されました。これは、情報を身に付けておくという先制攻撃ともとれますが、お客様に悪意はないようだったので、真摯に説明をしました。

 私は経緯の説明をして、保管の悪さを正直に伝えることが解決への近道と判断し、素直に謝罪をしました。そこで、来店理由をお聞きすると奥様の誕生日だったのです。これで、今回の犠牲者は、ご夫婦共になります。その想いが昨夜の怒りだったとも察することができます。

 話は進み、「今後どうするのか聞きたい」と言われましたが、これは相手が何を望んでいるのか、判断が最も難しい会話です。相手への対応なのか、居酒屋内の改善なのか、傷んだ食材の保管状況なのか。

 職場には当然冷蔵庫はあるのですが、カウンターに置ける小型のものがなく、食材の安全には小型冷蔵庫を購入し、よく使う食材を専門に入れて置くことを提案しましたが、「無駄だ」と言う返事一言、システムを根本から変えなければ、同じことを繰り返すと指導される始末でした。