地域全体で非正規の賃金相場が上がる事例もあります。北海道のニセコが有名ですが、インバウンドの観光客が急増した結果、地域全体の物価が高騰して牛丼一杯が2000円になりました。バイトの時給も1500円以上が相場で、観光のピーク時の時給は2000円台を突破しています。

 当然ながらニセコの近隣の町では人手不足が深刻になっています。地元のバイト給与水準ではニセコに到底太刀打ちできず、かといってニセコに合わせたら採算が合わない。このままでは人手不足による廃業も考えなければならないと近隣の中小事業者が悩んでいます。

 こういった「外資」から見れば、日本の給与水準は安すぎです。パート社員だろうがバイトだろうが、雇えさえすれば雇っただけお金を儲けることができる外資の優良企業が、日本の最低賃金制度を揺るがしている。これが現在までに起きていたことでした。

ところがこの状況が、国内からも揺れ始めています。こんなことが起きています。

 SNS上でパート従業員を募集する企業の画像が話題になっています。「まいばすけっと 時給」で検索すると、首都圏でイオンが展開するスーパーのまいばすけっとの募集広告の画像を見つけることがあります。

 話題になっているのが早朝、深夜の時間帯の時給が1800円、それ以外の時間帯でも1430円だということです。ウーバーイーツを利用した際に配達員が「ピックアップに行った先のバイトの時給に抜かれた」と嘆いていたのが印象的です。

 さて、フルタイムで働く場合の年間の労働時間は約2000時間ですからニセコで実際に起きているようにパート時給に2000円を出す会社がつぎつぎと登場すればパート従業員の年収は400万円になります。これまで非正規労働の常識はその半分、時給1000円、年収200万円が当たり前だと言われてきたものですが、その常識が変わり始めているのでしょうか?

 私は経済の未来予測が専門です。その立場で先に結論を申しあげると、パートの年収400万円の時代は確実にやってきます。今後5年間という想定でいえばパート年収500万円の時代がやってくる可能性すらあると考えています。その根拠を3つの切り口で説明させていただきます。