株主還元だけで株価が上がるとは限らない
増配や自社株買いといった株主還元策は一般的に株価上昇を促すと認識されていますが、実のところ株主還元が持続的な株価上昇につながるかは、実証的に明確な結論は出ていません。
株価は最終的に企業の業績や成長力に依存しますので、いくら株主還元を増やしても、企業収益が成長しなければ、株価が持続的に上がるとは限りません。株主還元によって、資金が外部に流出してしまうと、その分だけ研究開発費や設備・人材への投資が減少するとの懸念が生じ、成長期待を萎めてしまうこともあります。
近年において、それまで株主重視とは言い難かった経営を貫いてきた日本企業が変容しているのは事実です。余分な現金を削減したり、効果に乏しい政策保有株式を処分したりして得た資金を株主還元に充てています。
そうした行動が投資家を引き付けることで株価が上昇しているのは間違いないと思いますが、もう少し長い目で見た場合、「残念な高配当株」や「残念な割安株(低PBR)」に成り下がってしまう可能性があることには注意が必要です。
高配当(利回り)は必ずしも高成長を意味しない
一般的に配当利回り(配当金額÷株価)が3%を超えていると高配当銘柄などと言われます。配当の源泉が税引き後の利益であることを踏まえると、増配を続ける企業が持続的な利益成長を達成しているのは事実ですから、優良企業と言っても良さそうです。
ただし注意が必要なのは、(足もとの配当が高くても)将来の利益成長に対する期待が低いと株価は低迷してしまいます。たとえば、1株あたりの配当金が100円で、株価が2000円の場合、配当利回りは5%です。ここで何らかの要因で、企業の成長期待が低下し株価が1500円に下がると、同じ100円の配当金でも利回りは6.67%に上昇します。実際の事例でも、毎年増配を続けても、成長期待の低さから株価が上がらず、配当利回りだけが上がり続けてしまう銘柄もあります。もちろん業績が落ち込み、減配や無配になったりするよりははるかにマシですが、たとえば配当利回りが8%もある企業は訳アリを疑った方が良いかもしれません。