昨日よりも今日、今日よりも明日、できることが増えていくという手応えを「成長実感」とするならば、もっともそれを感じる瞬間は、上司や、周りの人からのフィードバックを受けたときに他なりません。
自分自身の経験をふり返ってみてください。
「あのときは本当に学びになったな」
「あの仕事が自分の転機になったな」
と、過去のキャリアを思い返していくと、その根底には
「あのとき○○さんがこう言ってくれたんだった」
「最後に言われた一言は印象深かった」
という、フィードバックの断片が浮かんでくるはずです。
上司や同僚からの言葉。顧客に言われたこと。結果が出たとき、あるいは出なかったときに受けた評価。このような「期待されている行動と実際の行為のギャップ」を知ることがフィードバックであり、それ以上に成長実感を得る機会はないと私は思っています。
部下が成長できないのは
声をかけない上司のせい
フィードバックによって、会社から期待されている姿と実際の姿の間のギャップを埋められることは、自分がなりたい職業人の実現に一歩近づくことにもなります。
それが、部下の心に火をつけるのです。
「ここができるようになれば、将来どこに行っても通用できるビジネスパーソンになれる」「今度やるプロジェクトをうまくやれば、グローバルセンスが身に付くからやったほうがいい」など、仕事で得られる能力や経験、知識は、単に部下の社内での昇進や評価のためというよりも、長い目で見たとき、職業人としての部下のありように必ずプラスになります。
そうして部下1人ひとりの会社・組織・チームへのエンゲージメントが高まり、パフォーマンスが発揮され、それが集まることにより、結果として組織の中に中長期的に成長する土台がつくられるのです。
基本的に、世の中で安定的に成長している会社には、フィードバックの仕組みと、それを実践する文化が根付いています。
2001年に初めて外資系企業に足を踏み入れて以来、およそ20年を過ごしましたが、フィードバックに力を入れていない企業は、1社もありませんでした。