あなたが部下に対しておこなうフィードバックの場面を思い浮かべてください。

 相手の成長と改善を期待して、誠意と敬意をもって率直に言うことは、これらに当てはまるでしょうか。

 何かあればすぐに、やれパワハラだなんだと騒ぐことと、労務上パワハラだと認定される事例とは、全く別の話だと理解できるはずです。

 ですが、日ごろのコミュニケーションの質に気を配ることもなく、口を開けば仕事の話しかしなかったり、注意・叱責ばかりだったりするのなら、フィードバックを「お荷物」や「お説教」だと思われても仕方ないでしょう。

 パワハラを理由にするのは、ふだんのコミュニケーション不足が招く自信のなさを昨今の風潮にすり替え、本来上司がやるべきことから逃げているだけではないでしょうか。

「背中を見て学べ」は
若い世代には通用しない

 一昔前までよく言われていて、今も残る風潮に、「仕事は習うものではなく、慣れるもの」という考え方があります。

 徒弟制度によって成り立っていた職人の世界や伝統芸能の分野では確かにそうかもしれません。ですが、このやり方はとうに通用しなくなっています。第一、大変非効率で不確実です。

 フィードバックができる場面と機会は、日常の仕事の中に豊富にあります。繰り返しになりますが、評価面接だけがフィードバックの機会ではありません。

「自分の背中を見て学べ」と1年間黙ってきて、いざフタを開けたき「いろいろがんばったようだけれど、もう少し事業部の仕事に踏み込んでほしかった」と言っても、部下は「今日までそんなこと全然言わなかったじゃないですか」と失望し、反発するでしょう。

 部下に対して人事評価の結果をサプライズ(思いがけないもの)にしないのは、マネジメントの鉄則。それが起こるのは、部下と上司の日ごろのコミュニケーションが不足しており、評価結果に対する認識が大きくずれているときです。