「フィードバック」という言葉を聞いて、あなたは何を思い浮かべますか?

 多くの日本企業のマネジャーたちと話をしていると、フィードバックに対する根本的な誤解や不安を抱えていることに気付きます。それは、長年培われてきた日本的なマネジメントの習慣や、近年の「ハラスメント」への過度な警戒感が生み出した、歪んだ認識とも言えます。

 フィードバックとは、評価面接のときにだけおこなうものではありません。日常的に習慣としておこなうべきものです。

 なぜこの評価になったのかを延々と説明するだけでは、中長期的視点から部下の育成を図ることは不可能です。

「会社はこの仕事で、あなたに高いコミュニケーション力で九州エリア全域をまとめてほしいと期待しているよ。今は中九州エリアはうまくいっているようだけれど、北九州は少し課題があるようだね」

「ブラッシュアップが必要だけど、今年度はもう少し数値的な分析を加えたいと考えているんだ」

 など、強みと伸びしろを織り交ぜながら現状と期待を具体的に明示することが、フィードバックの基本です。

伝える文化が根づかないと
部下の成長機会が奪われていく

 マネジャーの抱える大きな不安のひとつが「フィードバックをパワハラだと言われたらどうしよう」ということだと思います。

「改善してほしいことがあるけれど、それを言って辞められたら怖い。仕事がまわらなくなったら大変だ」

 こうして、言葉を呑み込んでいる多くのマネジャーを目にします。

「自分が言うと角が立つから」
「自主性に任せたい」
「今は多様性の時代だから」

 このようなフレーズもよく聞かれます。

 しかし、そもそもきちんとしたフィードバックとは、決して部下を萎縮させたり不快な気分にさせたりすることを意図するようなものではなく、ましてや上司の溜飲を下げるようなものであってはなりません。

 そもそもパワーハラスメントとはどういう状態なのか、その定義をふり返ってみましょう。

 厚生労働省が定めるパワーハラスメントの定義とは、

(1)優越的な関係に基づいて(優位性を背景に)
(2)業務の適正な範囲を超えて
(3)身体的若しくは精神的な苦痛を与えること、又は就業環境を害すること

 とされています。