期待値と実際のギャップは、毎日の仕事の中で、上司は当然わかっていなければいけないはずです。「言わなくてもわかるだろう」ではなく、「本人が自分で気付くことが大事」でもなく、言わないと通じない。こまめなフィードバックが必要なのです。

 ましてやジェネレーション・ギャップによる相互の受け止め方の食い違いや、多様な働き方によるコミュニケーションの変化が課題になっている現在、このようなやり方で部下との信頼関係をつくることは、かなり無理筋と言えます。

 フィードバックとは成長実感の源、源泉です。無言であることは、部下の成長機会を奪っていることであると意識すべきです。

 今の日本企業においてフィードバックの場が足りていないのは、異なる意見のぶつかり合いを避けたがる傾向が強いからでもあると思います。自分も相手にとって嫌なことを言いたくないし、相手からのネガティブ・フィードバックも、できれば受けたくない。

 日本は、ものごとを議論して決めていくというより、年功や職位などの属性によって意思決定が舵取りされていく構造となっています。だからそもそも、ディスカッションにあまり慣れていないのです。

 子どもを育てることひとつにも、「褒めて伸ばしたほうがいい」「いや、叱ったほうがいい」などという繊細な議論をする国は、一体他に存在するのだろうかと思います。